ビジネス

自動運転車の死亡事故続発をどう乗り越えるか、大前氏提言

経営コンサルタントの大前研一氏

 きたる高齢者社会にそなえて、自動運転車の開発に期待が高まっている。ところが、実証実験で死亡事故が起きたことで、その開発がいま、事実上ストップしている状態だ。経営コンサルタントの大前研一氏が、技術開発において事故が発生することをどう捉えるべきなのかについて考察する。

 * * *
 自動運転車の重大事故が相次いでいる。3月、タクシー配車サービスのウーバーテクノロジーズの試験車がアリゾナ州で自動運転中に道路横断中の女性をはねて死亡させたのに続き、EV(電気自動車)メーカーのテスラモーターズの「モデルX」がカリフォルニア州で半自動運転システムのオートパイロット中に中央分離帯に衝突してドライバーが死亡した。

 ウーバーはこの死亡事故を受け、北米での自動運転車の試験走行をすべて中止し、トヨタ自動車もアメリカでの自動運転の公道試験を中断。テスラはシステムがドライバーに警告を発していたと指摘したが、その限界も露呈した格好になった。

 それでも私は、これらの事故にあまり過剰反応しないほうがよいと思う。誤解を恐れずに言えば、自動運転に限らず、すべての新技術は、事故が起きることで安全になっていくからだ。技術開発の歴史は、事故の歴史でもある。

 たとえば、1969年1月に房総半島南端の野島崎沖で起きた大型貨物船「ぼりばあ丸」の遭難事故。就役後わずか3年余りの船体が真っ二つに割れて沈没し、乗組員31人が犠牲になった。当初、事故原因は不明だったが、後に当時の造船会社が選んだ鋼材の材質が最大の要因とわかった。

 実は私は博士論文のテーマが原子力潜水艦「スレッシャー号」などの沈没事故の原因分析だったので、金属の破壊について詳しく調べたことがある。鉄は体心立方という格子構造を持っていて、破断面が一気に走るという特徴がある。「ぼりばあ丸」の船体の鋼材は、低温下で(野島崎沖で特徴的な)大きな三角波に揺さぶられて過重な応力が加わると、パリーンと割れてしまうものだったのである。「低温脆性破壊」という現象だ。今の船はそうした破断に耐えうる鋼材を使っている。

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン