長期政権の末期に壮絶な利権争奪戦が起きるのは自民党の“お家芸”でもある。巨大な政治利権だった三公社(旧電電公社、旧日本専売公社、旧国鉄)の民営化を打ち出した中曽根内閣の末期には、NTTと日本たばこ産業が民営化された後、最後に残った旧国鉄のJRへの分割・民営化をめぐって存続派の議員と民営化派議員が争い、民営化派が勝利してJRへの影響力を奪い取った。
5年の長期政権を誇った小泉内閣も、郵政選挙で大勝利した後、小泉純一郎首相が総裁3選を目指さないことを表明すると政権は末期化した。小泉政権が最後に取り組んだのが沖縄の普天間米軍基地の辺野古移設と在日米軍(海兵隊)のグアム移転という巨大事業だ。
米国との交渉は小泉内閣から後継者の第1次安倍政権に引き継がれ、日本側は3500億円とされる辺野古の埋め立て事業費とは別に、グアムでの米軍施設建設に61億ドル(約7000億円)を拠出することで合意。巨大利権が自民党防衛族の有力議員や同省の有力幹部の暗躍の舞台となった。
安倍政権で起きている現象もまた然り。権力の終わりが見えたから、周囲はこの政権で得た“持てるだけの財宝”(政治的果実)を抱えて逃げ仕度を始めている。
それを時の総理が「オレにはまだ政策を支持し、支えてくれる同志や盟友がこんなにいる」と勘違いしているとすれば、「裸の王様」というほかない。
※週刊ポスト2018年5月25日号