「本人は気づかなくても、周囲から見れば“これは病的だ”とわかるはずです。たとえば、《浪費》でいうと1か月で数百万円を使うなど破綻することが明らかなのに躊躇しないとか、《自尊心の肥大》では他人をバカにする暴言を吐くとか、《性欲の亢進》ではわいせつ行為やレイプまがいの行為を平気ですることなどを指します」(片田さん)
◆寛解まで4~5年かかる
躁鬱病に悩む20代女性もこう吐露する。
「躁状態になった時にSNSに異常な投稿をしたり、芸能人から好意をもたれていると妄想したり、友人に暴言などを吐きました。私の言動の噂が広まり、元の自分に戻った時に気づけば周りにいる人がいなくなってしまいました」
身近な人で、躁鬱病が疑われる人にはどう対処すべきか。片田さんは「治療が絶対必要」と指摘する。
「鬱病と違うのは患者が躁状態を“爽快”と感じ、病気と認めないこと。躁鬱病を治すには家族が正しい認識を持ち、本人を説き伏せて、医療機関での治療が欠かせません」
躁鬱病は自然に治ることはないとされる。正しい治療をせずに放置していると再発を繰り返し、次第に発生間隔が短くなる。それゆえ、早期発見と早期治療が重要になる。ベーシックな治療法は「薬物療法」だ。岡田クリニックの岡田尊司院長が説明する。
「最も有効とされるのが気分安定剤の炭酸リチウムです。一般に治療の流れは薬物療法をしながらカウンセリングや心理教育を施し、ハイになったり落ち込んだりした時の対処の仕方を学習します。山口さんの場合はアルコールの離脱も同時に進めるはずです」
ただ、山口のように入院した場合、家族にとってつらい日々が続いていくという。
「一般的な躁鬱病患者の場合、入院できても病院側の都合により30日をめどに退院を促されてしまいます。そうなると、家族は新たに病院を探さねばならず、もし入院先が見つかったとしても、また30日ほどで退院させられてしまうことが多いんです。1つの病院に落ち着くことがなかなか難しく、患者にとっても、家族にとっても転院地獄が待っています」(医療関係者)
山口が治療を続けたのに治らなかったことについて、片田さんはこう指摘する。
「1つ目は薬をきちんとのみ続けなかったこと。2つ目は躁鬱病の治療薬と併用してはいけないアルコールを飲み続けたこと。3つ目は、離婚などで周囲のサポートが得られなかったことが挙げられます」
片田さんが続ける。
「大きな喪失体験に見舞われて自殺の恐れがあるため、山口さんは隔離された病室で24時間体制で監視されていると思います。それと併せ、薬物投与が行われているはずです。この病気は寛解までに4~5年と長期治療が必要で、退院した後も、必ず薬をのみ続けなくてはいけません」
周囲のサポートが不可欠だ。
※女性セブン2018年5月31日号