ライフ

「家族葬」と「一般葬」のコスト試算 香典ある一般葬が割安

ジャーナリスト、浄土宗僧侶の鵜飼秀徳氏

 簡素で格安な葬儀が人気となっている。参列者を集めないタイプの「家族葬」、葬式をせずダイレクトに火葬する「直葬」、そして墓を建てず遺骨を海に撒く「散骨」、遺骨を宅配便で寺院に送って供養してもらう「送骨」……では、簡素な葬儀が人気となっている背景とは? 浄土宗僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳氏が分析する。

 * * *
 なぜ急激に葬送が簡素化しているのだろうか。葬送は、長寿化や核家族化など社会構造の変化の影響を多分に受ける。筆者は70歳前後の、いわゆる団塊世代の意識に注目した。現在、葬送の担い手になっているのがこの世代だ。彼らは最大6人もの葬式に直面している。

 つまり団塊世代夫婦の両親が90歳を超え、まだまだ健在であるケースがある。加えて、団塊世代自身も終活の準備に入っている。葬式の平均費用は150万円程度。今後、最大6人の葬式の準備をしなければならないとすると、900万円もの費用が必要だ。老後の蓄えに加えて、さらに死後の費用を捻出するのは容易なことではない。

 そうしたニーズに合わせるかのごとく、安価で簡素な葬式プランが続々出てきている。では、家族葬や直葬を選べば、本当に費用を抑えられるのだろうか。

 筆者が家族葬と一般葬のコストを試算してみたところ、首都圏で30人規模の家族葬(80万~130万円程度。寺院への布施を含む)と、100人規模の参列者を見込む一般葬(90万~160万円。同)では、弔問客が香典を持ってくる一般葬のほうが、支出が圧縮される分、割安だった。それどころか地域や葬儀規模によっては黒字になる可能性も。家族葬や直葬を選ぶと、コストが抑えられるというのは安直な考えなのである。

【プロフィール】うかい・ひでのり/1974年、京都市生まれ。成城大学卒業後、新聞社記者、日経BP社を経て2018年に独立。主に「宗教と社会」をテーマに取材を続ける。著書に『寺院消滅』、『無葬社会』(いずれも日経BP刊)など。近著に『「霊魂」を探して』(KADOKAWA刊)。現在、浄土宗正覚寺(京都市右京区)副住職、東京農業大学非常勤講師、浄土宗総合研究所嘱託研究員。

※SAPIO 2018年5・6月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

12月9日に62歳のお誕生日を迎えられた雅子さま(時事通信フォト)
《メタリックに輝く雅子さま》62歳のお誕生日で見せたペールブルーの「圧巻の装い」、シルバーの輝きが示した“調和”への希い
NEWSポストセブン
宮崎あおい
《主演・大泉洋を食った?》『ちょっとだけエスパー』で13年ぶり民放連ドラ出演の宮崎あおい、芸歴36年目のキャリアと40歳国民的女優の“今” 
NEWSポストセブン
悠仁さまが2026年1月2日に皇居で行われる「新年一般参賀」に出席される見通し(写真/JMPA)
悠仁さまが新年一般参賀にご出席の見通し、愛子さまと初めて並び立たれる場に 来春にはUAE大統領来日時の晩餐会で“外交デビュー”の可能性も、ご活躍の場は増すばかり
女性セブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
日本にも「ディープステート」が存在すると指摘する佐藤優氏
佐藤優氏が明かす日本における「ディープステート」の存在 政治家でも官僚でもなく政府の意思決定に関わる人たち、自らもその一員として「北方領土二島返還案」に関与と告白
週刊ポスト
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情
(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
熱を帯びる「愛子天皇待望論」、オンライン署名は24才のお誕生日を節目に急増 過去に「愛子天皇は否定していない」と発言している高市早苗首相はどう動くのか 
女性セブン
「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる可能性も(習近平氏/時事通信フォト)
《台湾有事より切迫》日中緊迫のなかで見逃せない「尖閣諸島」情勢 中国が台湾への軍事侵攻を考えるのであれば、「まず尖閣、そして南西諸島を制圧」の事態も視野
週刊ポスト
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン