「人事の鉄則を崩されたことで、その後も佐川理財局長が国税庁長官に抜擢されるなど、なし崩しに政治の人事介入を許すことになって組織防衛の力を失った」(前出・同省OB)
今回の次官候補も、同省本来の順序によると、次の次官は岡本氏、その次は太田充・理財局長というレールが敷かれている。
しかし、岡本氏は森友文書の改竄問題で麻生氏による処分対象とみられており、太田氏も自民党に睨まれている人物だ。
改竄前の森友学園側との国有地売却交渉記録に安倍昭恵氏の名前が書かれていたことについて、太田氏は国会で「基本的に総理夫人だからではないかと思う」と答弁し、財務省の職員が昭恵夫人の影響力を認識していたことを認めたからだ。それに対して、自民党議員から「安倍政権を貶めるつもりがあるから、意図的な答弁をしているのか」と批判された。
太田氏は「私たちは一生懸命政府に仕えている。それはいくら何でも、ご容赦ください!」と反論したが、その“反逆”がアダとなって「次官の椅子は遠ざかった」(自民党財務族議員)との見方がもっぱらだ。
政治家による人事介入をはねのける力がない財務省は、「次の政権」での組織再建を見据えている。
「安倍政権は長くてもあと3年しか続かない。その頃、次官になるのは太田局長の後の入省組だ。次官候補は、岸田文雄・自民党政調会長の妹婿の可部哲生・官房総括審議官と藤井健志・国税庁次長に絞られており、2人の温存を図ることが最優先になる」(同前)