現代は、一人一人が、まさに小学生でもスマホ一台を持っていれば、撮った動画をそのまま配信できるし、生放送もできるという恐るべき時代だ。だからこそ、そのテクノロジーを駆使して世間に新しい楽しさを提供したり、あっと驚かせるようなコンテンツを配信して莫大なカネを稼ぐ者もいる。
一方で鑑賞してもらいやすい映像づくりの技術を磨かず、ただただ過激で下品な映像を垂れ流し、一時の耳目を集めて、カルト的なファンを集めようとする連中もいる。とくに後者の場合、既存メディアのように校閲者によるチェックなしにそのまま公開されるため、配信内容は過激になりやすい。そして内容も、法に抵触している場合が少なくない。
現在、誰でも簡単に情報を発信すること「是」とされているが、手段の手軽さに対して内容を向上させることへの呼びかけが小さく、その弊害がまさに彼らの存在なのだ。動画配信サイトに表示される広告を扱う代理店関係者も頭を悩ます。
「下品なユーザーの配信に広告が出ることを嫌うスポンサーもいます。ただし、いちいち運営が配信内容をチェックしていられないし、AI(人工知能)によって話の内容や配信映像の解析を行っている企業もあるが、超大手じゃないとなかなか現実的な話にはならない。配信サイトによっては、違反配信者を通報したユーザーに何らかの優遇対応をする計画などを立てているようですが、いたずらに通報が増えれば視聴者が減る不安も出てくる」
迷惑配信者達に眉を顰め遵法を促したところで、今のままでは、彼らがそれを聞くことはないだろう。彼らにとっては目立つことがすべてで、そのためには過激なことをやり続けないと目立てないと思い込んでいる存在なのだ。かつてはYouTubeも「違法動画の温床」などと言われていたが、ネット社会の一大インフラとして君臨するまでになった。そんなYouTubeでも、いまだに違法動画をアップするユーザーと戦わない日はない。大変な労力、そしてカネもかかるかもしれないが、現状は配信企業が地道に違反ユーザーを取り締まり、彼らを追放していくしかない。さもなければ、技術の発展で勝ち得た新たな技術が不届きものに食い物にされ、我々は結局その恩恵を受けることができないのだ。