ライフ

「スケベニンゲンって言ってみろ」はナチス工作員識別法

評論家の呉智英氏

 どんな人間にもスケベな要素はあるのに、良い方にも悪い方にも利用するのが人間だ。評論家の呉智英氏が、過去、人間が行ってきた発音による識別法などを振り返り、些細なことで人生を変えてしまう事例について考えた。

 * * *
「週刊新潮」に医師で評論家の里見清一がエッセイ『医の中の蛙』を連載している。五月三十一日号のタイトルは「スケベオヤジは死なず」。報道が相次ぐセクハラ事件を論じ「オヤジはすべてスケベであり、世の中はそれを利用しようという企みに満ち満ちている」とする。確かに、ポルノ産業だろうと出版界だろうと「スケベ根性を利用」している。好色を「完全に排除した人間関係」は存在しない以上、これを認めた上でその品格を保たねばならないという論旨である。

 まさにその通り。好色にも品格が必要だし、スケベオヤジの利用、いや悪用にも警戒が必要だろう。

 この三月に出た早瀬圭一『老いぼれ記者魂』(幻戯書房)を読むと、実際にスケベオヤジを利用しようと企んだハニートラップ事件があるのだと分かる。苦言を呈すると、この本は書名がよくない。この書名では老記者のジャーナリズム批判の本のように読める。だが、本書は一九七三年に起きた青山学院大学春木教授事件の真相を一記者の立場から半生かけて追った記録である。

 事件を知る人は、もう六十歳以上だろう。しかし、青学の教授が教え子の女子学生を強姦したとして逮捕された事件は、当時大きな波紋を呼び起こした。教授は無実を訴えたが懲役三年の実刑判決を受けた。当然職を失い、家庭も崩壊。刑期を終えた後も、無実を主張し続け、小さなアパートで孤独な生涯を終えた。

 だが、事件直後から冤罪説はささやかれていた。そもそも強姦被害を訴えた女子学生の行動が不審だったし、事件の背後には大学内の権力闘争や闇社会の怪人物の暗躍もあった。スケベ根性を利用された悲劇とするのが真相だろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン