そうしたなかで近年の日大には、「学部の拡大」で学生数を確保し、その上でさらに株式会社日本大学事業部によるビジネスで、より効率的に収益をあげようとする戦略が垣間見える。株式会社日本大学事業部の取締役には、内田正人・前アメフト部監督の名もあった。
2016年、田中英壽理事長肝いりで危機管理学部とスポーツ科学部がオープンすると、事業部の売り上げも16億円(2015年度)から44億円(2016年度)、69億円(2017年度)と急拡大。民間の調査会社によればその要因は、「教育用事務機器入れ替え特需による増収」とされている。
事業部の社長は相撲部部長でもある出村克宣・工学部長。取締役は大塚吉兵衛・学長、内田氏ら4人で、いずれも大学本部の理事との兼職で名を連ねていた。内田氏は理事を辞任したが、こちらの取締役についてどうなるかはわかっていない。彼らが実際の事業を切り盛りしているとは考えづらいが、日大事業部は「役員報酬は当社規定により、それぞれに年間100万円です」と回答した。
実務部隊として働く社員は17人。ただ、注目すべきは、そこに内田氏を頂点とする“アメフト村”から人材が供給されている実態だ。ジャーナリストの伊藤博敏氏が語る。
「2010年に会社を設立した際、商売をしたことのない大学職員は役立たない。そこで白羽の矢が立ったのが、内田氏の2つ後輩にあたるアメフト部OBの井ノ口忠男氏でした」
井ノ口氏はアメフト部の主将として甲子園ボウル優勝の経験者でもある。卒業後は、大阪でスポーツ用品販売などをする会社経営で才覚を発揮していたという。
「井ノ口氏は事業部では田中理事長との近さをアピールしながら社内を取り仕切った。その功績を片手に昨年9月の理事会で、日大本体の理事に就任しています」(伊藤氏)