24日・深川江戸資料館の「白酒・百栄」では田舎の空気感を見事に描く『馬の田楽』、一言多い女房のキャラが爆笑を呼ぶ『厩火事』の2席。どちらも白酒の卓越した「言葉遣いのセンス」が印象的な逸品。
三三、一之輔、萬橘らが出演した29日・よみうりホール「よってたかって春らくご」では白酒が『明烏』でトリを取った。僕はこの噺、吉原礼賛ではなく「変人に周りが振り回されるドタバタ喜劇」として描いている白酒の演り方が一番好きだ。
白酒は何を聴いても抜群の安定感がある。売れっ子になるのも当然だ。芸術選奨は国が与えるものだけに権威があり、全国的に報じられるため、地方の仕事が増えたりするとも聞くが、働きすぎて体を壊さないようにしてほしい。元気で高座を務めていれば、20年、25年先には文部科学大臣賞、紫綬褒章が待っている!?
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。
※週刊ポスト2018年6月15日号