芸能

芸術選奨新人賞獲得、桃月庵白酒の「顔芸」と「声色」

桃月庵白酒の魅力は?

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、平成29年度芸術選奨新人賞を受賞した、「顔芸」と「声色」で笑わせる桃月庵白酒について解説する。

 * * *
 前回、国立演芸場の花形演芸大賞について書いたが、文化庁が与える「若手の賞」に芸術選奨の文部科学大臣新人賞がある。

 演劇、映画、音楽、文学、芸能などの各分野で「優れた業績を挙げた者またはその業績によってそれぞれの部門に新生面を開いた者」に対し毎年3月に文化庁が贈るのが芸術選奨文部科学大臣賞、及び同新人賞で、平成29年度の大衆芸能部門で入船亭扇遊が文部科学大臣賞を、桃月庵白酒が新人賞を受賞した。

 受賞翌月の今年4月、僕は白酒の高座を7席観た。まずは6日・めぐろパーシモン大ホール「白酒・兼好・一之輔」での『お見立て』。白酒の『お見立て』は杢兵衛のキャラが際立っていて、「顔芸」と「声色」で笑わせる白酒の真価が発揮される演目だ。喜瀬川に伝授された「脛の下に扇子を置いて体を揺らしてゴリゴリやって痛みで笑いをこらえる」策を実施する喜助の動き、狼やフクロウを思わせる杢兵衛の泣き声などのバカバカしさは白酒ならでは。

 15日には三鷹市芸術文化センターの「白酒・兼好二人会」で『親子酒』『松曳き』の2席。『親子酒』は先代馬生の楽しさを継承しつつ、酒が飲みたい亭主の「ミエミエのお世辞」を真に受ける女房の可愛さを加えているのが白酒らしい。1人でも厄介なケタ外れの粗忽者が2人揃ってドタバタ劇を繰り広げる『松曳き』は「白酒に限る」という爆笑編。

 17日・なかのZERO大ホールでの「白酒・一之輔・萬橘」では『木乃伊取り』。堅物の田舎者が美女に酌されてスケベ心に火がついてハシャギまくる場面の可笑しさは「スケベで間抜けな男」を演らせたら右に出る者がいない白酒の真骨頂だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
3大会連続の五輪出場
【闘病を乗り越えてパリ五輪出場決定】池江璃花子、強くなるために決断した“母の支え”との別れ
女性セブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン