長崎県内にある高齢者施設の担当者も、高齢者の性問題に悩まされてきた一人だが“道具”の活用によって懸案が解決した例もあると話す。
「入居者の性問題は決して表向きには語られませんが、職員へのセクハラは日常茶飯事であり、高齢入居者同士の恋愛問題、そこから発展した人間関係の問題も頻発しています。入居者のご家族にも直接お話はできないのですが、職員がこっそり介助をしているケースはある。高齢者だから性欲はない、という前提で施設を運営してきましたが、入居者は枯れ果てたお年寄りだけでなく、元気なお年寄りも増えている」(施設担当者)
施設の男性職員が、セクハラの常習者であった入居者の男性と雑談中に思い立ち、“道具”を手渡したところ、入居者は涙を流して喜んだ。以降、別の男性入居者からも同様の“道具”の希望が相次いだ。一方、それで施設内のセクハラが減ったかといえば、問題はそう簡単に解決はしなかったともいう。
「性欲をおおっぴらに語るようになった入居者が一部にいて、職員を困らせています。また“道具”によって元気になった男性入居者と女性入居者の恋愛トラブルだって増えました。さらに言えば、女性の高齢入居者にだって性の問題はあります。元気なお年寄りがいること自体はよいことでしょうが、それに伴うトラブル、とりわけ高齢者の性についてはなかなか議論ができる世論ではなく、難しい問題なのです」 (施設担当者)
「老人は性欲も弱い」というイメージを抱いていた筆者。取材を続けていくうちに、この冗談みたいな話が真実であり、かつ深刻であることが見えてきた。高齢化社会を迎えた我が国で、高齢者がより人間らしく生きていくためには「高齢者の性」問題も、避けて通ることはできない。