例えば『牧田本』では、「果物は朝食に少量だけ食べればいい」といっているのに対し、『津川本』では「果物は心筋梗塞や脳卒中のリスクを減らす」として、1日の摂取量が増えるごとに死亡率が減るデータを紹介している。いずれも「果物が体にいい」という点では同じなのだが、少しでいいのか、たくさん食べたほうがいいのか──健康のために本を手に取った読者は、“両立”し得ないアドバイスだけに困ってしまう。
『牧田本』が推すのはコーヒーだ。そのメカニズムはまだ解明されていないものの、コーヒーに糖尿病を抑える実証データがあるという。
ただし「挽き立てをブラックで飲む」以外はNG。砂糖を入れたり缶コーヒーを飲むことは、糖質を過剰摂取してしまうデメリットのほうが大きい。
『白澤本』は、緑茶の認知症予防効果を強調する。
「緑茶を飲んでいる人はホモシステイン酸という神経毒性物質の血中濃度が低いことがわかっていました。そこで1か月間、高齢者の食事にお茶の葉を加えてみたところ、ホモシステイン酸の濃度が下がり、認知機能も改善したという研究があります」(白澤医師)
『牧田本』と『白澤本』はどちらも赤ワインの効能を説いている。抗酸化作用があるポリフェノールが含まれ、動脈硬化や心臓疾患などの予防になるという。
ここで取り上げたのは、いずれも医師がエビデンスを元に教える食事術ばかり。それでも様々な“違い”が出てくるのはなぜなのか。前出・『医者が教える最強の食事術』の監修者で、日本のアンチエイジングの第一人者であるお茶の水健康長寿クリニック院長の白澤卓二医師がいう。