ビジネス

世界三大メガネ産地の鯖江、最近の人気はクラシックタイプ

のこぎりで切り取り、枠をかたどる作業。数mmの誤差も許されない

 国産フレーム製造シェア率の96%を占める福井県。その中心が鯖江市だ。最近は、チタンフレームが人気で、世界中から注目を集めている。

 鯖江市のメガネは、安さが売りの中国(深セン・東莞、温州、丹陽、廈門(アモン))、デザイン&ブランド力に優れるイタリア(ベッルーノ)と並び、“品質鯖江”として、世界3大メガネ産地の1つにあげられている。

 その特長は、なんといっても軽くて締め付け感のないフレームにある。歴史は古く1905年(明治38年)に福井市で始まる。

「やはり北陸ですから、冬になると農業ができません。そこで当時、村会議員だった増永五左衛門が、農家の暮らしを向上させるため、大阪や東京から職人を招いて、製造技術を広めたことに始まります」(福井県眼鏡協会の島村泰隆さん・以下同)

 根気よくコツコツと作業をする雪国の人々の技術は、年々磨かれ、さらにクオリティーを高めるため、パーツごとに分業制となり、福井と鯖江の町全体が1つの工場としてメガネづくりを行うようになる。余談だが、その功績により、増永さんはのちに、“国産メガネの祖”と呼ばれるようになる。

「昭和50年代後半には、鯖江で、世界で初めてチタン金属を用いたメガネフレームづくりに成功しました。チタンは軽量ですが、素材としては硬くて丈夫。金属アレルギーも起こしにくいので、長時間かけていてもストレスにならないのです。ですがチタンは鉄よりも扱いが難しく、工程を細かく分けないと、きれいな形が作れません。そのため、1つのメガネを作るのに、200~300もの工程が必要になるのです」

 デザイン、フレームの金型作り、ねじの製造、プレス、研磨など工程は細分化され、専門の職人が手がける。数mmの誤差も許されない繊細な作業だ。

 現在、市内にある『めがねミュージアム』には、42のメガネ企業が出展し、メガネブランドの数は約140に及ぶ。さらに、100年前の作業風景や著名人のメガネなどが見られる。

「最近デザインで人気なのは重厚感のあるクラシックタイプ。素材ではチタン以外にもアセテート、セルロイドなどもありますが、硬質な素材感がきちんとした印象を与えるクラシックメタル系が、今後、世界的に流行るのではないかといわれています」

 メガネは、視力矯正だけでなく、紫外線やブルーライトなどから目を守る役割も担っている。最近は廃材を利用したアクセサリーや小物づくりも始まり、注目を集めている。そんな小さなアクセサリー1つにも、産地の伝統と技術力は生かされている。

※女性セブン2018年6月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン