文科相の諮問機関である中央教育審議会は2014年2月、各大学に「学長のリーダーシップの確立」を求める方針を打ち出し、それを受けて2015年4月から「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律」が施行された。改正の理由は「人材育成・イノベーションの拠点として、教育研究機能を最大限に発揮していくためには、学長のリーダーシップの下で、戦略的に大学を運営できるガバナンス体制を構築することが重要である」というものだ。教授会で甲論乙駁、何も結論が出ないことに対する中教審的解決策である。
結果、学長(大学のトップ)に絶対的な権限が付与されることになった。前述したように日大の学長は大塚氏だが、その上に田中理事長が法律上もワントップとして君臨しているのだ。つまり、文科省による大学のガバナンス改革が、田中理事長という“独裁者”の権力をいっそう強化したのである。
歴史を振り返れば、独裁者が登場すると当初は反発が出る。だが、反発した者は見せしめのために重い懲罰を科されて粛清される。独裁者は寝首をかかれることを恐れるから、手綱を緩めることはない。このため周囲の人間はイエスマンばかりになって“忖度の連鎖”が生まれる。
日大のガバナンスもそのような状態になっているわけだが、法的に田中理事長をクビにする手立てはない。現在の田中独裁体制にピリオドを打つ方法は、世論を追い風にした日大関係者のマジョリティによる“革命”か、文科省の指導・通達ぐらいしかないだろう。
※週刊ポスト2018年6月29日号