スポーツ

コロンビア戦を決めた「社会的比較」を心理士が分析

次は24日のセネガル戦(代表撮影:JMPA)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人やトピックスをピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、サッカーW杯の日本対コロンビア戦に注目。

 * * *
 平均視聴率48.7%、歴史的勝利の瞬間は、最高視聴率が55.4%という驚異の数字を叩きだしたサッカーワールドカップロシア大会、日本対コロンビア戦。試合が始まったその時間、近所にあるスポーツジムではトレーナー以外、誰もいなかったという。

 蓋を開けてみれば、大方の予想を裏切り2─1で歴史的勝利を飾った日本代表チーム。ゴールした大迫勇也選手の代名詞「半端ないって」は、瞬く間に世界中に拡散。強豪コロンビア相手では、そしてできたてホヤホヤの西野ジャパンでは勝てないと予想していた多くのサッカー解説者やコメンテーターたちは、翌日から続々とにこやかな顔で嬉しそうに謝罪し、「半端ない」を口にした。その勝利を「サランスクの奇跡」と呼んだメディアもあるが、奇跡はそう願う強い気持ちと準備がなければ起こらない。

 スタジアムの中はコロンビアサポーターの黄色で埋め尽くされ、日本は完全アウェー状態。日本でも多くの人がコロンビアが勝利すると思っていただけに、日本の選手たちは、コロンビアの選手たちと自分たちを比較して、向けられた期待の低さを感じ取っていたことだろう。逆にコロンビアの選手たちは、期待や熱意を感じ、自分たちの完全優位を実感していたはずだ。このように、自分の立ち位置や状況を見るために、相手や周囲と比較することを心理学的には「社会的比較」という。

「社会的比較」はこんな所にも見えていた。入場してきた選手がスタジアムに並ぶと、コロンビアサポーターから歓声が上がった。コロンビア国歌が斉唱されると、彼らの歌声が大きなうねりとなっていく。ゴールキーパーのダビド・オスピナ選手は、歌いながら目をつぶり、少し苦い表情を見せていた。だがキャプテンのラダメル・ファルカオ選手は柔らかい余裕の表情だ。スタメン入りしなかったハメス・ロドリゲス選手は、ベンチですでに勝利したような微笑みを浮かべ歌っていた。闘う前から勝ったも同然、そんなおごりさえ感じさせる微笑みだった。

 その様子が、日本の選手たちに見えていたとは思わない。だが、雰囲気は感じていただろう。「自分たちが負けると思われている」、そう感じれば、人は競争心をさらに強くして、いつも以上に力を出そうとするものだ。「社会的比較」は、人の意識や行動に強い影響を与えるという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン