ライフ

単身の高齢者が「狭小マンション」を購入するのは賢明か

単身高齢者は賃貸入居を断られることも多いというが…

 全国の賃貸アパートやマンションで入居を拒まれる単身の高齢者が多数報告され、深刻な問題となっている。賃貸オーナーは突然の事故や病気、孤独死などを恐れ、たとえ収入や貯蓄があっても高齢者には部屋を貸しにくいというのが大きな理由だ。その一方で、将来の“住不安”を逆手に取った狭小の新築分譲マンションも増えているという。では、高齢者になっても持ち家が必要なのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がアドバイスする。

 * * *
 現在、東京の都心エリアで供給されている新築マンションは、大半がコンパクトマンションと呼ばれる狭小タイプである。面積でいえば60平方メートル未満。ちょっと前までは40平方メートル台・50平方メートル台が中心だったが、最近は30平方メートル台や20平方メートル台まで見られるようになった。

 20平方メートル台というのは、いわゆるワンルームマンションと呼ばれるカテゴリーに入り、通常の分譲マンションとは一線を画する特殊な住宅だった。つまりは個人投資家向けの金融商品の延長線上にあるのがワンルームマンションだ。

 そういった特殊なマンションを、最近では大手のマンションデベロッパーが商品化するようになった。それも、賃貸需要が強い都心エリアだけでなく近郊エリアまで供給され始めた。その背景にはいったい何があるというのだろう。

 従来、コンパクトマンションというのはシングルの若年層向けだった。結婚して家庭を築く、ということにある程度距離を置いた単身の男女が「いつまでも家賃を払うよりも……」という理由で購入する需要を狙っていた。

 しかし、最近では少し違う。結婚をしない、ということも含めて何らかの理由で老後を単身で暮らさなければいけないシングル向けに20平方メートル台や30平方メートル台の新築マンションを供給しているようにも思える。

 マンション市場を長年観察してきた私から見ると、「20平方メートル台や30平方メートル台の新築マンション」という商品形態には健全性がない。

 その理由は、10年後に中古マンションとして売却する場合に、資産価値があまり評価されないからだ。「20平方メートル台や30平方メートル台で築10年超の中古マンション」というのは、「自分が住むため」というよりも「賃貸運用のため」の需要しか想起できないからだ。であれば、都心の人気のある駅の徒歩5分以内の物件しかまともな資産価値評価を受けられない。

 しかし今はちょっとした郊外の駅徒歩6分以上の場所にも「20平方メートル台や30平方メートル台の新築マンション」が、無視できないボリュームで供給されている。そして、それを購入していると思われるのは若年シングルだけではない、やや高齢の単身者も含まれるのだ。その背景には、「賃貸だと不安」という心理的な強迫観念があると推測できる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
反論を続ける中居正広氏に“体調不良説” 関係者が「確認事項などで連絡してもなかなか反応が得られない」と明かす
週刊ポスト
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
「全てを話せば当然、有罪となっていたでしょう」不起訴になった大物地面師が55億円詐欺「積水ハウス事件」の裏側を告白 浮かび上がった“本当の黒幕”の存在
週刊ポスト
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《大谷翔平が“帰宅報告”投稿》真美子さん「娘のベビーカーを押して夫の試合観戦」…愛娘を抱いて夫婦を見守る「絶対的な味方」の存在
NEWSポストセブン
「お笑い米軍基地」が挑んだ新作コント「シュウダン・ジケツ」(撮影/西野嘉憲)
沖縄のコント集団「お笑い米軍基地」が戦後80年で世に問うた新作コント「シュウダン・ジケツ」にかける思い 主宰・まーちゃんが語る「戦争にツッコミを入れないと」
NEWSポストセブン
神谷宗幣氏(写真中央)が率いる参政党は参院選で大躍進した。東京選挙区でも塩入清香氏(右)が当選(2025年8月写真撮影:小川裕夫)
《午前8時の”異変”》躍進した「参政党」、選挙中に激しい応酬のあった支持者と反対派はどこへ?参院選後の初登院の様子をレポート
NEWSポストセブン
令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン
ブラジルの元バスケットボール選手が殺人未遂の疑いで逮捕された(SNSより、左は削除済み)
《35秒で61回殴打》ブラジル・元プロバスケ選手がエレベーターで恋人女性を絶え間なく殴り続け、顔面変形の大ケガを負わせる【防犯カメラが捉えた一部始終】
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月12日、撮影/横田紋子)
《麗しのロイヤルブルー》雅子さま、ファッションで示した現地への“敬意” 専門家が絶賛「ロイヤルファミリーとしての矜持を感じた」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
三原じゅん子氏に浮上した暴力団関係者との交遊疑惑(写真/共同通信社)
《党内からも退陣要求噴出》窮地の石破首相が恐れる閣僚スキャンダル 三原じゅん子・こども政策担当相に暴力団関係者との“交遊疑惑”発覚
週刊ポスト