◆南北で不法占拠を正当化
そうならないために、どう交渉すればいいのか。
「日朝交渉のテーマを拉致問題だけに絞るのではなく、安倍首相は金正恩に『竹島』の返還を要求するという揺さぶりが考えられます」
そう話すのは『父・金正日と私 金正男独占告白』などの著書がある東京新聞論説委員の五味洋治氏だ。
「日朝首脳会談が実現すれば、日本が否応なく非核化費用や賠償金など莫大な資金負担を求められる。しかも、拉致問題の全面解決には時間がかかる。その前に日本が非核化の費用を負担せざるを得ないのであれば、その“着手の見返り”として金正恩に竹島の領有権放棄を突きつける。この問題については、首脳会談で北から大幅な譲歩を引き出せるチャンスがある」
島根県の「竹島」は、現在、韓国に実効支配されている。ここで五味氏が着目するのが、北朝鮮も竹島の領有権を主張している点だ。
そもそも竹島が歴史的に日本固有の領土であるのは様々な文献記録からして疑いようのない事実だが、第2次大戦後、韓国の李承晩・大統領が、「朝鮮固有の領土」と一方的に不法占拠して軍事要塞化した。一方で、北朝鮮も、〈独島(竹島の韓国名)は鬱陵島とともに遠い太古の昔からわが民族の手によって整えられ歴史を受け継いできた朝鮮の島〉(朝鮮中央テレビの2011年の放送)と領有を主張して独自の切手まで発行している。