国内

相模湾でアジが例年の1/5に激減、巨大地震の前兆か?

黒潮の「大蛇行」が地震に影響か

 キラキラと陽光が反射する水面に向けて、編み笠をかぶった釣り人が竿を振る──「鮎釣り」といえば、夏の訪れを告げる初夏の風物詩。東京近郊の相模川(山梨、神奈川)を訪れた釣り人は一様に驚きの声を上げていた。

「“入れ食い”ですよ。川の中で鮎がひしめき合っているのが見えるんです。今年は例年の10倍の鮎が遡上したそうです」(釣り人の1人)

 相模川で鮎が記録的な豊漁になった原因は、鮎の稚魚が育つ下流の相模湾で、天敵の「アジ」が激減していて、生き延びる鮎が増えたから。アジの漁獲量は例年の5分の1だという。

 アジと地震──なんの関係もなさそうだが、東海沿岸地域では、古くから経験則として「アジが減ると大地震がくる」ことが知られている。たとえば、1923年9月の関東大震災の直前にも、アジの不漁が見られた。現在、「30年以内に70%の確率で起こる」と予測されている首都直下地震はこの地震と同タイプだ。

 1944年12月に起きた昭和東南海地震の時も、アジが減った。死者数が最大で約32万人と予測されている「南海トラフ地震」は、この地震と同タイプにあたる。近年「アジと地震」の関係のメカニズムがわかりつつある。

 まず、アジが減った原因は、日本列島に沿って南西から北東に向かって流れる暖流「黒潮」の大蛇行にある。相模湾から黒潮が離れることで、アジが漁場からいなくなるのだ。 その黒潮の大蛇行こそ、「地震」に関係するという。元・気象庁精密地震観測室室長の岡田正実さんが解説する。

「大蛇行が起きている時は、伊豆半島から東海沿岸にかけて反時計回りの渦のような流れができ、黒潮の一部が東から西に流れて、潮位(海面の水位)が上がります。潮位が上がるということは、その海域の海水量が増えて重くなり、その海底の『プレート』に力が加わるということです。そこで大蛇行が解消されると、陸のプレートへの重しが減ります。そうすると、陸と海洋プレート間の摩擦が低下し、プレートの境界(トラフ)で地震が起こりやすいんです」

◆イワシが豊漁だった時は…

 伊豆半島から相模湾の南の海域は、フィリピン海プレートが北米プレートの下に沈み込む場所(相模トラフ)。また静岡市から西は、ユーラシアプレートの下に沈み込む場所(南海トラフ)にあたる。それらのプレートの境界(トラフ)がズレることで、前述のような首都直下地震や南海トラフ地震が起きるのだ。

「1854年には安政の東海・南海大地震が起きました。南海トラフ地震ですが、その直前にも黒潮大蛇行があったことが、その直前のペリー提督の海洋観測から推測されています」(前出・岡田さん)

 相模湾周辺の海域以外でも、同じような前兆は指摘されてきた。東日本大震災で甚大な津波被害を受けた東北の三陸地方には、古くから「イワシが豊漁だと大地震が起こる」との伝承があり、明治三陸地震(1896年)と昭和三陸地震(1933年)の直前は、いずれもイワシが豊漁だった記録がある。それらも、海流の変化で説明ができるそうだ。

 因果は巡る糸車。今年の夏は鮎の塩焼きを食べながら、大地震の備えについて考えを巡らせてほしい。

※女性セブン2018年7月12日号

関連記事

トピックス

いまだ“会食ゼロ”だという
「働いて働いて…」を地で行く高市早苗首相、首相就任後の生活は“寝ない”“食べない”“電話出ない” 食事や睡眠を削って猛勉強、激ヤセぶりに周囲は心配
女性セブン
政治資金の使途について藤田文武共同代表はどう答えるか(時事通信)
《政治資金で使われた赤坂キャバクラは新規60分4000円》維新・奥下議員が訪れたリーズナブルなキャバの店内は…? 「モダンな内装に個室もなく…」 コロナ5類引き下げ前のタイミング
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
歌手・浜崎あゆみ(47)の上海公演が開催直前で突如中止に
《緊迫する日中関係》上海の“浜崎あゆみカフェ”からポスターが撤去されていた…専門家は背景に「習近平への過剰な忖度」の可能性を指摘
NEWSポストセブン
QuizKnock
快進撃を続けるQuizKnock、起用が増えた背景に“脱・伊沢拓司”と“負けっぷりの良さ”
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
逮捕された村上迦楼羅容疑者(時事通信フォト)
《闇バイト強盗事件・指示役の“素顔”》「不動産で儲かった」湾岸タワマンに住み、地下アイドルの推し活で浪費…“金髪巻き髪ギャル”に夢中
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年12月3日、撮影/JMPA)
《曾祖父母へご報告》グレーのロングドレスで参拝された愛子さま クローバーリーフカラー&Aラインシルエットのジャケットでフェミニンさも
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《約200枚の写真が一斉に》米・エプスタイン事件、未成年少女ら人身売買の“現場資料”を下院監視委員会が公開 「顧客リスト」開示に向けて前進か
NEWSポストセブン
指示役として逮捕された村上迦楼羅容疑者
「腹を蹴れ」「指を折れ」闇バイト主犯格逮捕で明るみに…首都圏18連続強盗事件の“恐怖の犯行実態”〈一回で儲かる仕事 あります〉TikTokフォロワー5万人の“20代主犯格”も
NEWSポストセブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《広瀬すずのぴったりレギンスも話題に》「アスレジャー」ファッション 世界的に流行でも「不適切」「不快感」とネガティブな反応をする人たちの心理
NEWSポストセブン
2018年、女優・木南晴夏と結婚した玉木宏
《ムキムキの腕で支える子育て》第2子誕生の玉木宏、妻・木南晴夏との休日で見せていた「全力パパ」の顔 ママチャリは自らチョイス
NEWSポストセブン