宗教学者・釈徹宗が貂々さんとスペシャル対談


釈:ぼくは貂々さんに驚いたり、内容に笑わせてもらったり感心したり、連載中から毎回面白く読んでいたんですが、こうして単行本になって改めて感じるのは、貂々さんの成長物語になっているのが魅力ですよね。貂々さんが落語にご縁のなかったところからスタートして、だんだん引き込まれていって、落語のよさに次第に気がついていくプロセスを読むと、みなさん、落語をちょっと1回聴いてみようかなという気になると思いますよ。 ところで、ちーと君(貂々さんの息子)の落語は続いていますか?

貂々:最初は母の仕事に役立つから、と説得されて子供のための落語教室に通いだしたんですけど、自分がしゃべることで人に笑ってもらえることがうれしいみたいで、いつの間にか今も楽しんでいます。

釈:着物を着た人がたったひとり、扇子を持ち、座布団に正座したまま語るという芸能は、世界で落語だけだといわれますけど、10才の小学生の子供でも興味を持ってくれるというのは本当にうれしいですね。

◆これで笑っていいの?

釈:最初に落語にご一緒した時の演目は、『お多福来い来い』の第1回に描かれた『弱法師(よろぼし)』でしたね。

貂々:はい。で、私、本にも描きましたけど、このオチがわからなくて、どこが面白いんだろうって。先生に、「オチがわかりません」と言ったんです。後からいろんな人に「釈先生にそんな大それたことを聞いたの」とあきれられました(笑い)。

釈:何のてらいもなく、わからないことはわからないと率直に聞く。それが貂々さんのいいところです。もともと『弱法師』というのは、そんなに笑うところのないお話なんです。お能にもあるし、文楽や歌舞伎では『摂州合邦辻』という演目になり、さまざまな芸能で演じられていますが、落語ではあの時も、ほとんどの人が、貂々さんのように「納得できない」「え、これで終わり?」っていうムードだったんですよ。

貂々:安心しました(笑い)。

釈:言ってみれば、ダジャレなんです。昔の物乞いさんの典型的な言い回しに、「長々患(ながながわずろ)うて苦労しております」という言葉があったらしいんですが、それを、「長々」と「菜刀」を重ねて、「菜刀あつろうて苦労しております」と。ただのもじりです。

 もともと落語という芸能は、短い落とし話がベースで、それをいろんな人が膨らませてストーリーをもたせて、最後にサゲをくっつけた。ですから、あの話は一体どうなったんだっていうことにもなるし、納得のいかないことって、落語初心者ほど感じると思いますよ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
トランプ米大統領によるベネズエラ攻撃はいよいよ危険水域に突入している(時事通信フォト、中央・右はEPA=時事)
《米vs中ロで戦争前夜の危険水域…》トランプ大統領が地上攻撃に言及した「ベネズエラ戦争」が“世界の火薬庫”に 日本では報じられないヤバすぎる「カリブ海の緊迫」
週刊ポスト
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
新大関の安青錦(写真/共同通信社)
《里帰りは叶わぬまま》新大関・安青錦、母国ウクライナへの複雑な思い 3才上の兄は今なお戦禍での生活、国際電話での優勝報告に、ドイツで暮らす両親は涙 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン