ビジネス

横浜DeNAと関内駅 プロ野球と鉄道の新しい関係

ベイスターズステーションのひとつ「関内駅」

 ボールパークとは野球場のことだが、近年では、野球観戦だけでなく、飲食やファンサービス、レクリエーションを楽しむことができる空間全体を指している。日本のプロ野球に広がりつつあるボールパーク化だが、なかでも2020年東京五輪の試合会場にもなった横浜スタジアムと、そこを本拠地にする横浜DeNAベイスターズは、最寄りの関内駅も巻き込んだ変化となっている。ライターの小川裕夫氏が、プロ野球と鉄道の新しい関係性についてレポートする。

 * * *
 ファッション通販サイトのZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイの前澤友作社長が「大きな願望」と前置きした上で、プロ野球への参入を示唆するツイートをし、注目を集めている。プロ野球チームを所有することは、企業のステイタスとされている時代があった。プロ野球チームの親会社を見れば、日本経済界で勢いのある企業や業界・産業動向を知ることができる。

  バブル期までの鉄道会社は、日本社会や経済を牽引する屈指の企業であり、日本を代表する産業でもあった。それゆえに鉄道会社は、文化やスポーツ振興にも盛んに取り組んでいる。

 過去にプロ野球チームを所有した鉄道会社は、阪急がブレーブス、南海がホークス、近鉄がバファローズ、東急がフライヤーズ、国鉄がスワローズ、西鉄がライオンズといった具合に数多あった。また、名鉄もドラゴンズの経営に参画していたほか、二軍限定の独立チームながら山陽電鉄はクラウンズを組織している。短命に終わった女子プロ野球チームでは、京急が京浜ジャイアンツを結成してもいる。このように鉄道会社は資本力と大きな存在感で、プロ野球の発展に大きく貢献してきた。

 マイカーが普及してくると、鉄道会社の存在感は縮小。現在、球団を所有している鉄道会社は、西武鉄道-ライオンズ、阪神電鉄-タイガースの2社しかない。鉄道会社と野球の関係は、以前より明らかに希薄になっている。

 ところが、ここにきて鉄道と野球が再接近している。プロ野球チームが人気回復の一環として取り組んだ“ボールパーク化構想”は、地元自治体を巻き込み、それが鉄道にも如実に反映されているからだ。

 セ・パ12球団のうち、横浜DeNAベイスターズはボールパーク化をもっとも強く打ち出している。横浜スタジアムで試合が開催される週末は、試合開始前からスタジアム周辺でステージイベントが開かれ、屋台などが並ぶ。ファンは野球観戦だけを楽しみに来場するのではなく、スタジアム周辺、もっと言ってしまえば街全体を楽しもうと足を運んでいる。

 DeNAは、一般的なボールパークの概念をさらに深化させた「コミュニティボールパーク」構想を掲げる。ベイスターズのコミュニティベースボールパーク構想は、スタジアムが立地する横浜公園だけではなく、動線となる鉄道駅にも及ぶ。

「DeNAがベイスターズの経営にタッチしたのは、2012年のシーズンからです。その年の4月には、JR京浜東北・根岸線の関内駅、横浜市営地下鉄の関内駅、みなとみらい線の日本大通り駅の3駅を“ベイスターズ・ステーション”と宣言しました」と話すのは、横浜DeNAベイスターズ広報部の担当者だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン