溝口:大学出のヤクザは少ないけども、そのなかでの学閥のようなものはやはり出来上がる。国士舘出身者を集めた同窓会を開く組長を知っています。
鈴木:私は慶應出身のヤクザに会ったことがあります。親分が「こいつ慶應出なんだよ」って、嬉しくてみんなに自慢していた(笑い)。1年経たずにいなくなったけど。やっぱり、学がないほうが偉い、少年院行ったほうが偉い、少年院の中でも特少のほうが偉いという“逆学歴社会”では生き残れなかったのかな。
溝口:世間とは逆で、大卒は出世できないとされている。良くて二次団体の幹部で頭打ちですから。
鈴木:一生懸命探したけど、東大出のヤクザにはいまだに会ったことがないんですよね。
溝口:一時期、六代目山口組の司組長が東大出のエリートをブレーンとか秘書として使っていると言われていました。
鈴木:マスコミとの交渉も担当していたという人ですね。しかし、盃は交わしていないようで、組員としての活動がない。一流大学卒の人を、組織外のブレーンとして活用する組は増えているみたいですね。
溝口:かつては法政大学を退学して愚連隊をつくった安藤昇のような人間がいました。最近、私が取材した「詐欺の帝王」は明治大学出身だったし、半グレにも大学出身者がけっこういる。時代の流れですね。
●みぞぐち・あつし/1942年東京浅草生まれ。早稲田大学政経学部卒。『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション大賞を受賞。『山口組三国志 織田絆誠という男』(講談社)など著書多数。
●すずき・ともひこ/1966年北海道札幌生まれ。『実話時代』の編集を経てフリーライターへ。『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文春新書)など著書多数。
※週刊ポスト2018年8月17・24日号