芸能

大御所となった有吉弘行 Amazonプライムでの新たな挑戦を考察

有吉弘行の脱ぬるま湯は成功か(イラスト/ヨシムラヒロム)

 かつてテレビで放送されるバラエティ番組といえば、何のためにもならない、くだらない、でも面白くて仕方がないものだった。だから老若男女が夢中になり、良識ある大人からは「低俗」と非難された。でも、あれが面白いんだよなぁと残念に思う人も少なくないが、地上波テレビではコンプライアンスの問題などからかつてほど大胆な表現ができない。その限界を突破した新番組、Amazonプライム・ビデオで配信中の『有吉弘行の脱ぬるま湯大作戦』について、イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が考えた。

 * * *
 5年ほど前から中野区観光大使をやっている。現在は特に活動をしていないが、任命当初は、数本のバラエティ番組に出演させていただいた。なかでも印象に残っているのが、タレントSと僕が中野を散歩するといった奇妙な番組。

 そこで見たSの技はすごかった。カメラが回っていない時の表情は暗い、だが「本番でーす」とディレクターから声が掛かった瞬間にお茶の間で知るSの顔へと変化。正確なリポートをしながらも「ギザ」や「かわゆす」といったSが普段から多用するワードを盛り込む。製作陣が求めていることをタイトかつキッチリとこなす。たいして僕はあたふた、面白いことは言えない。しかし、なにか残したいと無駄にベラベラと喋る。

 実際に体験してみるとタレントの頭の回転の早さに驚く。そして、良いタレントとはコメントの使用率が高い人だとも気づく。ヘタにスケベ心を出して、長く話しても嫌われるだけだろう。

 タレントの場合はナイスコメントを残せば良いが、芸人の場合はそこに“笑い”も加わる。民放のバラエティに出演するのは予選を勝ち抜いた猛者ばかり、そこで爪痕を残すのがいかに大変か。しかし、逆に見ればコメントの銃弾行き交う戦場で“笑い”という明確な戦果を残せば、視聴者も同業者も納得するしかない。

 そんなミッションインポッシブルを達成し、バラエティ番組の王様に成り上がっていったのが有吉弘行だ。一昔前、再ブレーク途中の有吉弘行のコメント力は凄かった。

 芸人同士のやりとりの構造は口ゲンカに近い。矛盾やスキを付き、追い込む。ただし最後は、相手を泣かせるのではなく笑わせて救う。当時、有吉弘行の批評性のある毒舌に勝てる芸人はいなかった。誰が見ても圧倒的に面白くて強い。やりあった芸人も最後は笑うしかないのだ。

 話芸で勝ち名乗りを上げ続け、今では大御所MCとなった有吉弘行。それでも各所で語られるのは売れなかった時代に食わせてもらった上島竜兵へのリスペクトと身体を酷使した笑いへの渇望だ。制作費、コンプライアンスの問題からテレビは”笑い”を自由に描けるキャンバスではなくなった。有吉世代の芸人が憧れただろう『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』を実現することは不可能。そんななか、やってきた黒船ことAmazonプライム・ビデオ。スポンサーはAmazon自身なので無茶な企画でも実現可能となった。

 2018年8月、遂に有吉弘行もAmazonプライム・ビデオに参戦。

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