かつて私が詳述したように、1994年に小選挙区制が導入された当時、旗振り役を務めた小沢一郎自由党代表(元・民主党代表)らは、定員2人以上の中選挙区制から定員1人の小選挙区制に移行して政権交代が可能な二大政党制を実現しなければならない、と主張していた。しかし、小選挙区制が導入された結果、今や自民党が圧倒的多数を握り、野党は四分五裂して二度と政権交代ができそうにない状況になっている。しかも、小選挙区制になってからは「おらが村」に予算を引っ張ってくるだけの小粒な“運び屋”政治家ばかりになってしまった。
これに対し、私は統治機構を道州制にして、選挙制度は大選挙区制にすべきだと主張してきた。たとえば、衆議院を大選挙区にして、10の道州から10人ずつ選ぶ。そうすれば衆議院議員は100人に削減できる。
そして、ほとんど意味のない参議院は廃止して、国民投票で代替する。つまり、衆議院で発議した重要法案の可否を国民投票で決めていく。あるいは参議院を各分野の利益代表だけにしたり、アメリカの上院議員のように人口に関係なく各都道府県から2人ずつ選ぶという手もあるだろう。一つの選挙区で2人選ぶなら、男女1人ずつにするという制度も考えられる。
大選挙区制の良い点は、専門家を選べることだ。たとえば北海道が一つの区になれば、面積が半分くらいなのに農業・畜産業の生産性と国際競争力が高いデンマークやオランダについての知見があるなど、北海道にとって本当に重要な問題に精通していてビジョンのある政治家が求められるはずだ。九州の場合は、今後の経済成長を考えるとインバウンドが最も重要であり、港湾・空港・道路の建設や民泊の整備を推進して訪日外国人客を増やすしかないから、それに特化した政治家が出てくるだろう。
そういう新しい選挙制度は、向こう50~60年耐えられるものにしなければならない。なぜなら、選挙制度は定着するのに10年、機能して20年、変えようという議論で10年、合わせて40年はどうしても続くからである。