杉田発言がマスコミで取りざたされ始めると、各社が杉田議員へアプローチを続けるも「まったく捕まらなかった」(大手紙政治部記者)というが、そのころ当の本人は支援者に向けた講演活動中で北海道にいた。件の主張について全く曲げる姿勢はなく、支援者からも「頑張れ」「間違っていない」といった激励が相次いだという。

「マスコミも野党も騒ぎすぎ。どうせ弱者を作り上げて寄生して、安倍政権を潰したいのでしょう。講演会会場に札幌のテレビ局が来たようですがね……追い返しました(笑)。日本は少子化で、子供を産まないと日本は滅びる。純粋な日本人をもっと増やして、反日的な人々を追い出さないといけないんですよ」

 こう話すのは、かつて筆者が保守系論壇誌に寄稿していた際に、SNSを通じて激励のメッセージをくれた北海道在住の経営者男性(50代)だ。杉田議員の講演の一つに参加していた。筆者は「そういった考えは受け入れられない」と返したが、頑として主張は変えない、と言い切る男性。

 純粋な日本人とはどんな存在なのか、反日的な人々とは何をさすのか、問いただしたいことはいろいろあるが、ただ相手を貶め、相手より優位に立てばどんな手段も厭わない議論にとらわれすぎていないか。それはどの思想信条の人にもある傾向で、今回の騒動でも、記事で名指しされたLGBTの人たちは置き去りにされている。左右の政治的議論に巻き込まれ、疲弊し、結局は単なるパフォーマンスの為に消費された後は、誰も関心を寄せない、ということになりはしないか。

 杉田氏周辺を取材する大手紙記者も不満を呈する。

「杉田議員は後に注意を受けることになりましたが、安倍首相をはじめとした上の人々がそもそもこうした問題に関心が低い。なので、事の重大性を理解しようとせず、叱責されない杉田議員本人も“これくらいなら過激な主張をしてもよい”と思っているのでしょう。

 左右の政治スタンスに関係なく、この件はあまりにひどすぎるし、糾弾されるべき。杉田議員はマスコミの追及から逃げ回っていますが、主張が正しいと思うのなら、堂々と出てきて話せばよいのです。仲間内では強がっているようですが、騒ぎが大きくなって怖じ気づき、表に出てこずコソコソとしている感が否めません。結局過激なことを言って注目を集めようとするパフォーマンスだったと言われても仕方ないでしょう」

 杉田氏は国会議員なので、主張のいびつさは選挙によって国民から審判を受けるだろう。だが、彼女のパフォーマンスに便乗して、当事者を置き去りにした”論戦”を激しく繰り広げている人たちが、みずからを省みる機会はあるのか。いわゆる専門家だけでなく、ネットで強く主張を続ける匿名の人たちも含めると、自分たちはいったい何をしていたのか、それによって何を失ってしまったのかを気づく機会はあるのか。

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