ライフ

東京・京橋で97年 老舗焼き鳥店『伊勢廣』の職人技と味

「フルコース(12品)」6480円

 もうもうと絶え間なく立つ白い煙。時折、煙の隙間から串を返す職人の真剣な眼差しが見える──。

 大正10(1921)年から京橋に店を構える老舗焼き鳥店『伊勢廣』の焼き台は、朝7時に炭を熾(おこ)してから閉店の21時近くまで、一日中フル稼働だ。真っ赤になった紀州産の姥目樫備長炭(うばめがしびんちょうたん)の上に、鶏の脂と肉汁、そして戦後の営業から継ぎ足しているタレが滴り落ちると、パチパチと音がして何とも言えない香ばしさが漂う。

 本店の昼の部では、岐阜県は奥飛騨の米「乙女ごころ」を使った熱々の焼き鳥丼が評判だ。14時には一度のれんを仕舞うが、焼き台の職人は、日本橋高島屋の売店に卸す持ち帰り用の焼き鳥を焼き続ける。高島屋店の品は冷めてもなお炭火の香りが残り、肉の滋味がじんわり広がると評判で、購入客の8割がリピーターという人気ぶりだ。

 路地の看板がほんのり光り出す頃、夜の部はコースのみの提供となり、ゆっくりと串を楽しめる。

「鶏の味を余すことなく味わってほしい」と考えた初代が、コース仕立てで焼き鳥を提供することを考えてから早97年。「フルコース(12品/6480円)」の献立は創業当時のまま、京橋に集う食通を今日まで満足させてきた。

 タレ・塩の味付けも、各串の旨みを最大に引き出す組み合わせで提供してくれる。串のために選び抜かれた静岡県産の塩は、粒子の形が平たく舌の上ですっと溶け、繊細な味わいを生み出している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン