一方、えみるの上司で福祉生活課係長・京極大輝役を演じる田中圭さんも、まさしく時の人。『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)で大ブレイク。男同士の純愛をテーマにしたこのドラマ、吉田鋼太郎と林遣都が田中圭を取り合う、という設定の爆笑純愛物語。年上の部長に愛を叫ばれたり、後輩にいきなり唇を奪われたりする田中さんの慌てぶりが実に可笑しく切なく、狼狽する表情に、画面に釘付けになりました。ジタバタする田中さんの即興的演技は話題となり、写真集はバカ売れ、関連グッズも次々に発売され今もブレイク継続中です。
そこであらためて『健康で文化的な最低限度の生活』を見てみると、2人の持ち味である「不気味な役の巧さ」「枠をはみ出した時の威力」「即興的演技」「定型に納まらない存在の魅力」といったことが発揮しようのない、かっちりとした役柄です。公務員役に2人は向いていない? 「健康で文化的な吉岡里帆と田中圭」が輝くのかどうか、そのあたりよく吟味してキャスティングして欲しかった。今回の数字は、役者さんのせいというよりも制作サイドの課題ではないでしょうか。
ちなみに、このドラマは非常に真面目な側面があり、わかりにくい制度を懇切丁寧に解説しているあたり好印象です。文字で説明されても理解しにくい決まりごと、例えば申請をしてから生活保護が認められるまでの過程や、「扶養照会」とは何かといった専門用語解説など、「制度」の中味をドラマとして的確に立体化して伝えています。いや、制度のみならず、様々な受給者側の事情、社会的要因などを細やかに描き出し、偏見も多い「生活保護」について理解を促す、という意味で大きな役割を果たしそうです。