ただ、その一方で多くの人が「すぐ死ぬんだから」という言葉に寄りかかりたい気持ちを抱えている現実もある。宗教学者で『人は死んだらどこに行くのか』などの著書がある島田裕巳氏は言う。
「若い時は目標を立て、それを実現するために練習したり勉強したり努力したりする。ですが、年を取るとそういう目標が立てにくくなる。何か努力をしたとしても、それが何かの役に立つだろうとか、役に立てようとイメージすることが難しくなってくるわけです。
活き活きと老後を過ごすとか、子供たちに迷惑をかけないようにと分別ある高齢者が良いように言われるけども、そういう人ばかりじゃない。
そんなとき、“すぐ死ぬんだから”という言葉は、まわりからあれこれ言われないための決めゼリフにもなるわけです。周囲から“まだ大丈夫よ”と返してもらい、それによって安心したいという気持ちが込められている言葉なんだと思います」
ここで重要なのは、“すぐ死ねない”という現実とどう向き合うかだろう。
※週刊ポスト2018年9月14日号