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「すぐ死ぬんだから」と口走る人、すぐに死ねない現実直視を

「すぐ死ねない」という現実とどう向かい合うか

 脚本家・内館牧子氏(69)の小説『すぐ死ぬんだから』が売れている。78歳の主人公・忍ハナ(おし・はな)は実年齢より10歳は若く見え、銀座を歩けば“お洒落なシニア”の街頭スナップのモデルを探す雑誌編集者に声をかけられるほど、ファッションや体型維持に気を使う女性だ。40年以上連れ添う夫の岩造は、麻布の老舗酒屋の跡取りで、ハナは酒屋の女将さんとして奔走したのち、息子・雪男に店を譲って夫ともどもリタイアした。「すぐ死ぬんだから」という言葉は高齢者がもっとオシャレをすれば、と提案された時に使われる言葉であり、手を抜くための免罪符として使われていると内館氏は感じている。

 高校の同窓会で〈バアサンくささに磨きがかかっている〉同級生たちへの優越感に浸りながら、ハナは嫉妬と羨望を浴びる。だが、今を楽しむことに専念するハナは、ある日、岩造が自宅で倒れたことから、予想だにしなかった事実を知ることになる──。

 平均寿命は男女ともに80歳を超え、「人生100年時代」ともいわれる超高齢化が進むなか、「終活」ブームが続いている。エンディングノートや遺言の書き方、遺された人に負担や迷惑をかけないための葬儀や相続の備え方が、テレビや雑誌を通して大量に流されている。

 長い間懸命に生きてきてようやく築いたものも多いはずなのに、今度はそれを断捨離して、死ぬまでにできるだけ身軽になることを求められる。それはつまり、「自分が死んだ後のことを考えろ」という“要請”に他ならない。内館氏が語る。

「遺される人にとってはありがたいものでしょうけど、まだ本人がしっかり生きてるんですから、そんなことに手をかけるくらいなら、どんどん延びている墓場にたどり着くまでの時間を、どうやって生きていくか考える方がよっぽど重要なことです。その1つの答えが、ハナのように“自分が人にどう見られているか”を気にするということだった」(内館氏・以下「」内同)

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