芸能

綾瀬はるか『ぎぼむす』 『逃げ恥』超えを導くある効果

コミカルな演技が好評(番組公式HPより)

 この作品の成功により、「契約結婚」はヒットの定番となるかもしれない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 綾瀬はるか主演のドラマ『義母と娘のブルース』(TBS火曜午後10時)の勢いが止まらない。9月4日放送の第8話でまたもや記録を更新。平均視聴率15.5%(関東地区)と右肩上がり、今期連ドラ1位という数字を叩き出しています。同枠で大ヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』を凌駕するのでは、とも期待され、注目される『ぎぼむす』。いったいこのドラマの何が「凄い」のでしょう?

 とにかくまず最初に視聴者の目を惹くのは、綾瀬さんが演じるキャリアウーマン・岩木亜希子の異様さでありユニークさ。

 日常生活でもスーツ姿にパンプス、娘に敬語を使い直角に頭を下げる。パン屋の兄ちゃん・麦田 (佐藤健)に対してもビジネストークでプレゼン。どこかぎくしゃく不器用で、感情が表に出ない鉄面皮。キャリアウーマンの“理屈”“正当性”をぐいぐいっと前面に押し出していくその姿が、何ともコミカル。

 と、綾瀬さんの演技は一風変わっています。

 ところが、話の主軸の方は違う。母と娘の心の交流が丁寧にきちっと描かれたり、第8話のオチなんて「先代の味を継ぐ」「パン作りには思い入れが大切」と実に正統派。人情味のあるハートウォーミングなドラマ展開となっています。

 つまり、「風変わり」と「古風」の絶妙な掛け合わせこそ、このドラマのヒット要因ではないでしょうか?

 風変わりなドラマ設定をすれば、目新しいけれど、とっきにくい。コアなファンは生まれても、一般の視聴者に広く訴えかけることはできない。一方、「古風」「正統」なテーマだけでは地味で目立たない。今「家庭」ドラマを普通に作ってみても、かつて見たようなものにしかならないし、視聴者が「家族」の本質について考えるとも思えない。下手をすれば説教クサくて嫌などと言われてしまうかもしれません。

 ところがもし……突然やってきた義母が「ビジネスパーソン」そのもののだったら? 感情表現の苦手なロボットのような人だったら? その人を「母」と思えと言われたら?

 改めて「親子の関係ってそもそも何だっけ」と物事の本質まで考えてみたくなる。という意味で、綾瀬さんの役柄は強烈な「異化効果」を放っています。

「異化効果」とは演劇用語です。簡単に言えば、日常と非日常の壁を破る効力のこと。普段は当たり前と思ってスルーしたり問い直しもしない対象を、新鮮で見慣れない対象、思考を働かす対象へとガラリと転換させる効果のことを言います。そもそもはドイツの劇作家・ブレヒトが生み出した言葉だけに、異化効果はドラマツルギーと密接に関係しています。

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン