◆熱血が通用する時代は終わった
スポーツ界にかぎった話ではない。
精神科医の原田正文氏は、いまの日本では親が子どもを管理し支配する傾向が強くなっていることをデータによって示すとともに、それが思春期に行き詰まる子を増やしているのではないかと指摘している(『完璧主義が子どもをつぶす(ちくま新書)』より)。
大学で学生を見ていても、中学・高校時代にスパルタ教育を受けてきた学生は、おしなべて知識の量は豊富なものの、自分の頭で考えたり、自分から行動したりすることができない傾向がある。
仕事になると、それはいっそう深刻な問題だ。
部下はいつも強制や命令をされていると、最低限の仕事しかしなくなる。しかもIT化やアウトソーシングによって、そのような仕事の大半が消えつつある。残った仕事の多くは自分の頭で考え、自分の意思で行動しなければ成果があがらない性質のものである。実際、世界を席巻しているIT・ソフト系の企業や、優れた人材が殺到している優良企業では、ハラスメントはもちろん、熱血指導やマイクロマネジメント(重箱の隅をつつくような細かい管理)とも無縁だ。
要するにスポーツや教育においても、仕事でも、求められるレベルが上がったいま、従来のような熱血監督や熱血教師、鬼上司は通用しなくなったのである。それは、「リーダーシップ」のあり方が、いま根本的な転換を迫られていることを意味している。
◆これからのリーダー像とは
では、これから目指すべきリーダー像とはどのようなものか。
1つ目のタイプは、プロフェッショナルとしてのリーダーである。彼らは組織行動論、すなわち心理学や行動科学などの専門知識を応用し、フォロワーの潜在能力を引き出すとともに、それを組織力、チーム力に結びつける。スポーツ界、教育界、産業界を問わず、欧米のマネジャーにはこのタイプが多い。
2つ目のタイプは、つねに選手のため、生徒のため、部下やチームのためを考え、徹底的に尽くすリーダーである。最近はやりの名称を使うと「サーバント・リーダー」ということになる。企業では、顧客に近いところにいる現場の社員が最も偉いというメッセージを込めて、逆ピラミッドの組織図を描く人もいるくらいだ。
3つ目のタイプは、最低限の役割だけを果たし、あとはフォロワー個々人に、あるいはチームに任せるリーダーである。「委任型リーダー」と呼ぶことができる。フォロワーが自立していて、必要な知識や技術も備えている場合には、このタイプがベストである。
それぞれタイプは異なるが、共通するのは「フォロワー・ファースト」の姿勢である。自分が目立ちたい人、主役になりたい人はこれからのリーダーには向いていないといえよう。