アジア選手権期間中、柿木は吉田と同部屋で、決勝を投げ合ったふたりは互いに刺激し合っていた。
「自分の進路も大事にしたいし、投げる時は、アピールの場だとも思っている。チームが勝つ中で最高のアピールができたら……」
浦和学院の外野手・蛭間拓哉は、プロ志望届を提出して“プロ待ち”するとも、大阪桐蔭の中川卓也と同じ東京六大学野球の名門に進学するとも噂される。
予選ラウンドの韓国戦では、2度のチャンスにいずれも凡退。1対3と敗れた試合後は、いつも底抜けに明るい蛭間も、自責の念にかられていた。
「勝負強さをアピールしたいのに、逆に弱さが出てしまった。今後は一瞬一瞬を大切にしていきたい」
高校日本代表が臨んだアジア選手権は、列強との戦いの場であると同時に、野球人生を左右する決断の場であり、プロに向けた最後のアピールの場でもあった。
●取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)
※週刊ポスト2018年9月21・28日号