明徳義塾の市川悠太(撮影/藤岡雅樹)

 そのスカウトが期待を寄せていたのが、浦和学院の190センチ右腕・渡辺勇太朗だ。1年秋からベンチ入りを果たすも、その後はケガに悩まされてきた。しかし、この夏は直球が149キロをマーク。スカウトが言う。

「我々が高校生で注目するのは、“のびしろ”。完成度は求めていない。即戦力が欲しければ社会人選手を指名します。渡辺は高校生活で投げられない時期が長かったにもかかわらず、あの角度のあるストレートと鋭く曲がるスライダーを投げられる。アジア選手権の活躍によっては、2位指名で消える可能性だってある」

 渡辺は慎重に言葉を選びながら、淡々と自身のアピールポイントを口にした。

「まだ(プロ志望届を)出すかどうかわかりませんが、将来性があるな、と思っていただけるようなピッチングを心がけたい。まだまだ筋力のない弱い身体ですが、一応、140キロ後半を投げられますし、試合を作る投球術、フォームのバランスを見てもらいたい」

 渡辺と同じ右の豪腕で、今夏の甲子園優勝投手となった柿木蓮こそ、最も評価を高めた選手だろう。参加選手最速の151キロを記録し、スライダーにフォークと変化球にも磨きをかけた。「外れ1位に入ってくるかもしれない」と話すスカウトもいるほどだ。

「良い意味で注目されていることを力に、甲子園の決勝戦を投げさせてもらったことを活かしていきたい」

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