分かりやすい例を挙げてみよう。東京都港区元麻布で販売が続いている、とある新築の超高級マンションは、1戸約157平方メートルで5億1800万円。坪単価にすると約1086万円。目の玉が飛び出るような高値だ。
一方、同じ港区元麻布エリアで過去1年に売買された中古マンションを調べてみると、同番地の築17年・121平方メートルは1億9300万円、坪単価525万円。隣番地の築10年・112平方メートルは1億7200万円、坪単価504万円。坪単価で比較すると新築の約半分だ。
現状、港区内の中古マンション市場は、人気の高いエリアでも築10年前後は坪単価にして500万円から600万円が相場観である。しかし、まだそれほど多くはないが坪単価が1000万円を超える住戸を含んだ新築マンションが販売されている。さらに言えば、市場の目には触れないが、坪単価2000万円を超える新築マンションも、富裕層のインナーマーケット向けに販売されている。
都心における新築マンション市場では、もはや経済的合理性ではまったく説明できない水準まで価格が高騰してしまったのだ。そして、この傾向はまだ当面続きそうだ。
ただ、このような高額な新築マンションが飛ぶように売れているわけではない。建物が完成した後でも長く販売が続き、最後はこっそりと大幅値引きしたうえで売却されることも多い。
そういう住戸が表立って値引きを始めたら、いよいよバブル崩壊だろう。ただ、今のところそういった兆しはない。また、これから新たに販売が開始される物件では、さらに価格が上がっている可能性が高い。
都心エリアの土地価格は今も上昇が続いている。高値で買う企業や富裕層がいるからだ。企業の中身はマンションデベロッパーやホテル開発業者。インバウンドは今後も増加するので、ホテル業界は強気だ。
マンションデベロッパーも、土地を買わなければ事業が展開できないので、高くても買っている。「マンションの価格が高くなっても売れるだろう。市場は何とか付いてきているから」という思惑だろう。
ただ、現状を見ると都心の不動産バブルはとっくに限界に達している。特にマンション市場は新築も中古も在庫だらけだ。
私はここ10年ほど都心のマンション市場を細やかに眺めてきたが、新築マンションの在庫が今ほど滞留していた光景を知らない。また、個人投資家が値上がり狙いで購入した新築未入居のマンションが大量に売り出されている。そして、その動きは極めて鈍い。