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2018.09.22 07:00  SAPIO

元侍医が述懐、昭和天皇は重篤な状況の月に目を向けられた

 印象に残っているのは術後のお言葉です。「もうダメか」。お仕えしていた人、誰もが、ご自身の体調のことかと思いました。しかし陛下の真意は違いました。「沖縄訪問はもうダメか」。これは、国民のことを第一にお考えになっていた陛下の姿勢を象徴するお言葉といえるのではないでしょうか。

 そのご様子を伝え聞いた私は感じました。聡明な陛下は、ご病状を理解しておられるのではないか、と。

 陛下は昭和の歴史を背負っておられます。遺されたいお言葉があるのではないか。だとしたら病名を告知すべきではないかと私は考えていました。しかし侍医たちの話し合いの結果、病名を伏せて治療にあたることになったのです。

 過去に一度、陛下に「お痛みですか」とうかがったことがあります。陛下は「痛いとはどういうことか」とお応えになりました。痛いと訴えることは天皇としてふさわしくない振る舞いとお考えになったのでしょうか。あるいは、国民に心配をかけまいとしたのかもしれません。陛下のお気持ちは私には分かりませんが、痛みについて最期までお話しになりませんでした。

 事態が急変したのは翌63年9月19日のこと。大量の吐血をきっかけに私どもは24時間態勢で、御所に詰めるようになりました。

 数日後の夜。私は吐血と下血の処置をしておりました。そんな私に陛下は平然とこうおっしゃったのです。

「伊東、今日は満月だよ。その障子をあけてごらん。きれいだ」

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