ライフ

失踪していた母が孤独死 娘名義の通帳に残された残高は…

孤独死した母が残した娘名義の通帳には…(イラスト/ico)

 高齢化社会の中で大きな問題となっているのが孤独死だ。38才会社員の女性Aさんは、失踪していた母が孤独死を迎えたという。亡くなった母が遺していたものは何だったのか──。Aさんが、孤独死の裏側を告白する。

 * * *
「母親に会わせてやる」

 そう父から連絡があったのは、私が30才の時のことです。

 母は24才で私を産むと、その3年後に失踪。理由や居場所を父に何度も聞きましたが、そのたびに、顔が腫れ鼓膜が破れるほど殴られ、決して教えてはくれませんでした。

 自動車会社でエンジニアをしていた父は私に無関心で、私は、父方の祖母の家で育てられました。祖母はしつけと成績に厳しく、少しでも粗相をしたり、成績が下がると、「あの女の血筋だからね」と、私をさげすみました。そのたびに私は、母の面影を思って泣きました。顔も覚えていませんが、記憶の中の母は、とてもやさしかったんです。

 大学卒業後は上京し、実家とは縁を切りました。しかし突然の父からの電話には、心が揺さぶられました。

 新大阪駅で待ち合わせ、地下鉄に乗って西成の古いアパートに連れていかれました。そこは、数日前に母親が孤独死した部屋だったのです。

 母は、結婚してからも浮気を繰り返し、父のお金を盗んで若い男と家出をしたのだそうです。そう言われても、私は実感がわきません。ふと、引き出しを開けると、私名義の通帳がありました。見ると、3000円が入っていました。ほかにも、私が赤ん坊の時に使っていたりんご柄のよだれかけと写真も…。

 子を捨てた母は、“最低な母親”です。でも、決して私を憎んで捨てたわけではない。たまに思い出してくれていたのではないでしょうか。

「馬鹿な女だ」

 そう言って、背中を震わす父もまた、本心では母を憎み切れなかったのだとわかりました。思えば今も父は、独身を貫いています。もしかしたら、母が最後の罪滅ぼしにと、私と父を仲直りさせてくれたのでは…。都合がいいかもしれませんが、私はそう解釈しました。そう思うことで、長年の父へのわだかまりが少しとけた気がします。

※女性セブン2018年10月18日号

関連記事

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン