橘:Hagexさんは、自分が生命の危険にさらされるほど恨まれていることに気づいていたんですか?
中川:多分分かってなかったと思います。たまたまHagex氏が福岡に行く予定があり、それに合わせてセミナーも行ったところ、事件が起きた。
橘:これから精神鑑定が行なわれるようなので安易に決めつけることはできませんが、常識的な判断を大きく逸脱していることはまちがいないですよね。
【*編注:精神鑑定で刑事責任能力を問えると判断され、10月5日に殺人罪で起訴された】
中川:発達障害にしても、診断されることで安心するっていう話があったりすると思うんです。先日、NEWSポストセブンでも、発達障害のピアニスト女性の記事(元記事は『女性セブン』に掲載)を配信したところ、たくさん読んでもらえました。彼女のコメントで、「22歳で発達障害という診断されてホッとした」という記述がありました。これは病気認定をされ、「私は発達障害だから自分はこんななんだ!」と安心できた、という話です。やっぱりIDを取りまくって「死ね」とか「低能」って言い続けるっていうのも、病気認定をされたらどうだったのかな、とも思うのですが。
──病気認定することで新たな問題は出てこないんでしょうか。差別につながる可能性もあると思いますが。
中川:それは橘さんが執筆された『言ってはいけない』に出てくる「バカは遺伝に左右される」的な「事実は事実である」っていう話かな、とも思うんですよね。決して差別につなげてはいけませんが。
橘:これはとても難しい問題で、明らかに病気や障がいのあるひとに対して、「なんでできないんだ」とか「みんなやってるじゃないか」と責めるのは差別というか虐待です。でもその一方で、自分はみんなと同じようにできると思っているのに、「お前は病気だ」「障がい者」だと専門家が診断して、権利を制限してもいいのかという問題があります。誰が見ても妄想にハマっているなら、措置入院も仕方ないかもしれない。でも「低能先生」はたぶん境界例で、本人に病識はなく、親のお金で生活も何となくできていた。言動はおかしいけど、最低限の社会生活を送っているなら、公権力が介入する理由はありません。そういう境界例のひとたちをどう扱うかは、日本だけじゃなくて世界じゅうで大きな課題になってきています。