オザワ部長が『市船soul』を高校野球の応援で聴いたのは、今年が初めてだったという。シンプルで分かりやすく、覚えやすいメロディーだと思ったそうだ。
大義くんがライバル視していた名門・習志野高校のオリジナル応援曲『レッツゴー習志野』は、1970年代の在学生が作ったという。ということは、もう50年近くも演奏され続けているということだ。
「学校ごとに“チャンステーマ”はありますが、オリジナル曲は少ないんです。中でも学生が自ら曲を作ったというのはかなり希少。先生が作ったものならいくつかあるのですが。そういった意味でも、『市船soul』は今後何十年も市船に引き継がれる応援曲になると思いますよ」(同前)
オザワ部長は最後に言った。
「大義くんは、これからの吹奏楽界で大きな存在感を放つ人になっていたんじゃないかと思います。『20歳のソウル』を読んで、やっと大義くんに会えた気持ちです」
これからも彼の音楽は「生き続ける」ことだろう。
◆文・中井由梨子(脚本家)
【プロフィール】
なかい・ゆりこ/1977年兵庫県出身。8月に上梓した『20歳のソウル』が話題を呼ぶ。劇作家・演出家・演技指導講師。1996年、神戸で旗揚げされたガールズ劇団・TAKE IT EASY!に座付き作家として入団。2005年に活動拠点を関西から東京へと移す。2010年、劇団中井組の座付き作家・演出家に就任し、2013年まで活動。2018年2月にmosaiqueを結成。
おざわぶちょう/日本でただひとりの吹奏楽作家。1969年生まれ。神奈川県横須賀市出身。県立横須賀高校を経て、早稲田大学第一文学部文芸専修卒。在学中は芥川賞作家・三田誠広に師事。『一球入魂! 一音入魂! 甲子園に響け!熱援ブラバン・ダイアリー』(学研プラス)など著書多数。吹奏楽CDのプロデュース・ライナーノーツ執筆、司会、講演など幅広く活動している。Twitterアカウントは@SuisouAruaru