◆どこにしまえばいい?
自筆証書遺言については、もう一つ改正点がある。法務局に預けられるようになるのだ。保管費用は数百円の印紙代のみである。
この制度によって、これまで自宅などに保管していた遺言書が第三者に改ざんされたり、家族が発見できず、遺言の内容が伝わらないという事態も防げる。ゆい会計事務所・代表税理士の西津陵史氏はこう指摘する。
「公証人の立ち会いのもと、弁護士が作成した遺言書を読み上げてハンコを押す公正証書遺言は、財産の数にもよりますが、費用が数十万円から、場合によっては100万円以上かかることもあり、一般の人にはなかなか手を出しにくいという面もありました。負担が軽減されたので、自筆を選択する人はさらに増えてくるでしょう」
ただ、こうした改正で、自筆証書遺言の問題がすべて解決したわけではない。
「目録で間違えるというリスクはやや解消されましたが、そもそも案文が要旨不明というケースはよくあります。『このマンションは○○にあげます。この土地は△△にあげます。残りは話し合って分けてください』と書いてあると、“残りの分の話し合い”にマンションと土地をもらった2人も入っていいのか、除外されるのかわからない。『このマンションは好きにしていい』と書いてあるだけでは、住んでいいのか、売ってもいいのか、貸していいのかもわからない。
自分一人で有効な自筆証書の遺言を作るというのは非常に難しい」(前出・北村氏)