さやかちゃんの自由研究は医師達への取材に基づいている


 由紀さん宅の近所に実家があり、年末年始はそちらで迎えた。治療で大変な中、食卓に並んだ実母の手作りお節がありがたかった。家族そろって笑顔で年越しを祝った。

 年明け、由紀さんは再び入院した。治療を続けながら何よりも気がかりだったのは、実家に託しているさやかちゃんのことだった。

「入院中、最初のうちはいつも通りに学校に通っていたんですが、途中から頭が痛いと言って保健室に行く日が2、3日続いたそうなんです。朝から不調を訴えて、結局お休みした日もあったと母から聞いて、あれこれ考えました。私の病名をきちんと話した方がいいんだろうか。いや、でも、それで娘が不安定になってしまったらどうしよう、と不安が順繰りに襲ってきて、迷いに迷いました」(由紀さん)

 まんじりともできぬまま、朝を迎える日もあった。毎朝、ランドセルを背負って元気いっぱいに手を振るさやかちゃんの笑顔が浮かぶ。このままでいいんだろうか──。

◆『がん哲学・緩和ケアとの出合い』──充分な時間がある時に、知りたいことに答えてあげよう

 体力が少しずつ回復するにつれ、由紀さんも少しずつ自分のこと、娘のこと、家族のことを考える余裕が持てるようになった。

 そこで、がんについての情報を集める目的も兼ね、治療中の患者たちの集まりに参加することにした。

「最初は、『あれっ? みんながんの人ばっかりなんだよね? こんなに元気で明るいのに?』って思いました。やっぱり私の中でも、がんって悪い病気っていう思い込みがあったから、塞ぎこんでるイメージしかなかったんです。

 でも、その会は、喫茶店で行われたんですが、みんなで笑って、話し合って、あっという間でした。それまで情報量も少なく、不安や孤独感に苛まれることもありました。でも、同じ病気で頑張っている仲間に出会えたことで、安心したし、励みにもなりました」(由紀さん)

 孤独な治療が続く日々に一条の光を見た由紀さんは、同様の会に積極的に出向くようになる。中でも『がん哲学外来メディカルカフェ』で得た話はとても有意義で、自身のがんと改めて向き合えるようになったという。

「例えば、抗がん剤の治療をした後、女性の場合はウイッグを用意するかたが多いかと思うんですが、こんなにおしゃれでお手頃なものがあるんだよと教えてもらったりして。 副作用は人によって出方もさまざまだけど、どんな症状があって、がまんせずに吐き気止めの薬をのんでもいいんだとか…前もっていろんな知識を与えてもらったことは心構えになってよかったです」(由紀さん)

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