国内

母の発病がきっかけ 小学生自由研究「がんについて」が反響

さやかちゃんが「たくさんの人に知ってほしい」と思ったこと。自由研究『がんについて』より

「ねぇ、さっきカメラマンさんと“恋バナ”してたでしょ?」
「えっ、ママ、聞こえてたの?」
「なになに~? ママにも教えてよ」
「またあとでね~!」

 屈託ない笑顔と女子トークで盛り上がっているのは、東海地方に住む主婦の由紀さん(43才)と一人娘のさやかちゃん(12才)。親子というより、まるで姉妹のようだ。もともと仲のいい母娘だったが、ふたりの絆は、この夏を経てさらに強いものとなった。

 そこには、さやかちゃんの“研究結果”があった──。

 由紀さんは3年前にがんを発病し、現在も抗がん剤投与などを受けて闘病中だ。さやかちゃんは母の病気を知り、がんについてもっと知りたいと思った。パソコンでがんについて調べ、細かくノートに書きつけた。そして、小学校で課されたこの夏休みの自由研究のテーマにがんを選び、一冊にまとめた。

『がんについて』と題されたスケッチブック大の表紙をめくると、イラストや漫画を交えながら、丁寧な文字で研究内容が綴られている。これが今、大きな反響を呼んでいる。

「最初の頃はがん=死と直結してしまい、なかなか娘に本当のことを言えませんでした。でも、意を決して打ち明け、娘はそれに正面から向き合ってくれた。うれしかったです。…今回、取材のご依頼を最初はお断りしようと思っていました。女性週刊誌というと、“奇跡の”とか“衝撃の”って大袈裟に書かれちゃうんじゃないかと思って。

 でも、娘の作品を見るにつけ、その思いを改めました。私自身がかかって思ったことですが、がんに対する先入観やマイナスの思い込みをなくして、正確な知識をより多くのかたが持つべきだと思います。この記事がそのきっかけになればありがたいです」

 自由研究『がんについて』が完成に至るまでの、揺れ動く母娘の心中を聞いた──。

◆『発病』──娘に病名をきちんと話した方がいいんだろうか──

「がんのことを知れば、親がどんな病気にかかっているかを理解できるし、もし自分がかかった時も焦らないな、と思いました。私が自由研究を通して思ったのは、きちんと治療をすれば、“がんは怖くない病気だ”ということです」

 そう語るさやかちゃんだが、母の病気を知り理解するまでにはいくつかの過程があった。 体調不良を感じた由紀さんが国立病院機構名古屋医療センター(愛知県名古屋市)で診断を受けたのは、3年前。診断は「悪性腫瘍」、がんだった。

 耳や顎の下にある大唾液腺や口腔、鼻腔などに発生することが多い、腺様嚢胞(せんようのうほう)がんという希少がんだった。

 折しも12月後半。いつもなら、さやかちゃん(当時、小3)と一緒に、クリスマスの飾りつけや年賀状の準備であわただしく過ごしている時期だ。

「さやかには本当のことを言えずにいました。まだ小さいから意味がわかんないんじゃないかなと思ったり…やっぱり、がんってあんまりいいイメージがないんじゃないかなって思ったり…それに、その時はまだ治るかもしれないし、という軽い気持ちもあったんです。だからずっと『咳の治療』だと伝えていました」(由紀さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン