国内

地面師の女、生保レディーから55億円詐欺師になるまで

”舞台”となった旅館跡地。女はなぜ地面師に?(時事通信フォト)

 新宿署から身柄を送検される車の中で、報道カメラのおびただしいフラッシュを浴びながら、後部座席の真ん中に座る女は白い歯を見せ笑っていた。右、左と首をふって車を囲む報道陣を見回すと、ぶつぶつとつぶやいて上目遣いでまたニヤリと笑う。逮捕された他の容疑者たちが顔を隠す中、彼女の堂々とした態度と不気味な笑みは異様だった。

 大手住宅メーカー「積水ハウス」が東京・品川区の旅館跡地をめぐって「地面師」グループに約55億円もの金を騙し取られた詐欺事件。主犯のカミンスカス操容疑者(58才)らは海外逃亡中だが、10月22日までに9人が逮捕された。そのうちの1人が羽毛田正美容疑者(63才)だった。

「地面師とは、土地の所有者になりすまして売却をもちかけ、代金を騙し取る詐欺師のこと。羽毛田容疑者は土地所有者である旅館の女将になりすます重要な役回りだった。本物の女将の生年月日や干支などを覚え、現場での振る舞い方も指導されていたようです。実際の取引の場では相談役のカミンスカス容疑者らに任せてほとんど発言せず、干支を言い間違える場面もあったようですが、それでも偽物とは見抜かれなかった」(捜査関係者)

 彼女には意外な「表の顔」があった。羽毛田容疑者の自宅は、東京・足立区の下町情緒が残る住宅街にある、タイル貼りの3階建ての借家。近隣住民によれば、羽毛田容疑者がここに住み始めたのは10年ほど前だという。

「旦那さんと離婚してここに引っ越してきたと聞きました。お子さんが4~5人いたんじゃないかな。シングルマザーで大変だなと思いましたよ。いちばん下の子は今もまだ成人したかしないかくらいです。逮捕され、テレビで顔を見た時は本当にびっくりしました。以前はふっくらとしていて柔らかい印象だったのに、すっごくやせていたので…」(近隣住民)

 別の近隣住民も驚きを隠せない様子でこう話す。

「毎朝、ニコニコしながら“おはようございます”と挨拶してくれる感じのいい女性でした。いつも黒のスーツに白いシャツという地味な服装で、人当たりがよくて。保険の外交員をやってると聞いて、“社交的で真面目そうだし、なるほどな”と思ったんだけどね。この辺りの住民は羽毛田さんのところで保険に入ってる人も多かったんだよ」

 周囲からは、生保レディーをしながら幼い子供たちを育ててきた、苦労人のシングルマザーだと思われていた羽毛田容疑者。だが、彼女が詐欺に手を染めたのは今回が初めてではない可能性が高いという。

関連記事

トピックス

維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
《高市首相の”台湾有事発言”で続く緊張》中国なしでも日本はやっていける? 元家電メーカー技術者「中国製なしなんて無理」「そもそも日本人が日本製を追いつめた」
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
NEWSポストセブン