「その最高傑作が井上ひさしさんの『ひょっこりひょうたん島』(NHK・1964~1969年)で、要は戦争中、大人は嘘ばかりついて子供を騙したじゃないかと、人形劇の体裁を借りて訴えた野心作でした。その系譜を継ぐのが人形に赤裸々な本音を託す同局のバラエティ『ねほりんぱほりん』。人形は人に似た別物だからこそ、様々な気づきをもたらすメディアたりうるのです。
つまり僕は人形の話じゃなく、人間の話をしていて、そこを学生や読者に一番わかってほしいんです」
本書もいわば人間のための人形論を模索した一つの過程といえ、人間と人形の間について問い続ける彼の試みは今後も楽しく、より豊かに、展開されるに違いない。
【プロフィール】きくち・こうへい/1983年埼玉県鴻巣市生まれ。早稲田大学第一文学部演劇映像専修では同教授で演劇博物館長の岡室美奈子氏に師事、同大学院文学研究科博士後期課程を単位取得退学。日本学術振興会特別研究員、早大文化構想学部表象・メディア論系助教を経て、現在は同文学学術院等で非常勤講師。助教時代の2014年に立ち上げた「人形メディア学概論」と「人形とホラー」は学内投票で第1位を獲得、各メディアでも活躍する注目の気鋭。180cm、80kg、B型。
構成■橋本紀子 撮影■三島正
※週刊ポスト2018年11月16日号