「現場は常にバチバチでした」と振り返る、きうち監督
──遠藤さんも完成披露の舞台挨拶などで、監督に怒られたエピソードを振り返っていました。撮影3日目に突然監督から「外に出てください」と呼ばれ、「もうアイデアを出すのはやめてほしい、僕にも作りたいものがあるんだから」と言われたとか。
きうち:映画監督の中には、役者がこうしたいと言ったら何でもその通りに変えてしまう気の弱い人だっているでしょう。現場の雰囲気としても和気あいあいと楽しくできたほうがいいですからね。
でも、撮影の休憩時間に皆でお弁当を食べる時間が気持ちいい、みたいな空気を優先して、内容的に妥協するわけにはいきませんよね(笑い)。たとえ役者さんと揉めてでも、いい作品をと思いますし、出来上がったもので納得させてやるという思いが強かったんです。
──遠藤さんと監督、コワモテの2人が揉めていたら、とても近づきたくない感じがします(笑い)。おふたりとも愛煙家ですが、気まずい空気の中、撮影現場の喫煙所でバッタリ出くわすなんてこともあったのではないですか?
きうち:ふたりとも現場を抜けたら、真っ先に喫煙所に向かっていたので、何度も一緒になりましたよ。でも、ロケセットではどんなに揉めていても、喫煙所では少し歩み寄る空気をつくるような会話をしてみたり努力しました。「遠藤さんって休みの日は何してるの?」みたいな。
映画の撮影日数は17日間しかなく、スケジュールもタイトなので撮影現場では決してあり得ない会話ですが、喫煙所では「どうせ休憩でたばこを吸っている時間だから……」と無駄話もしたくなる。喫煙所はコミュニケーションの場というのも分かります。きっと、たばこを吸う時間がなかったら、揉めている会話しか残らなかったでしょうね(笑い)。