国内

婚活市場をさまよう膨大な数の高齢女性が難民化

国会前でデモを行う全共闘世代に若者たちは全く共感できない AFLO

 高齢者が多数となった日本でいま、彼らの婚活が大きな問題を生み出している。『言ってはいけない』(新潮新書)などで知られる作家の橘玲氏が、高齢者の婚活市場で生まれる難民問題について指摘する。

 * * *
「日本人はヨーロッパの難民問題を他人事みたいに思ってますけど、いままさにこの国で深刻な“難民問題”が起きているんですよ」

 そう教えてくれた男性は六十八歳で、定年退職後に事情があって離婚し、余生を共に過ごす伴侶を婚活サイトで探していた。そんな彼が体験したのは、金持ちの男を求めて婚活市場をさまよう膨大な数の高齢女性がいるという現実だ。

 彼女たちの多くはずっと専業主婦で、離婚や死別で一人暮らしになり、わずかな年金しか受給できないものの、資格も就業経験もないのでいまさら働いても満足な収入は得られない。そんな彼女たちにできる唯一のことは、男に尽くして養ってもらうことなのだという。

 そのため、パートナー選びの基準は収入だけだ。年金や投資収入などで年収五百万円あれば、一人の男性に何十人もの女性が群がってくる。年収三百万円でもぎりぎり許容範囲だが、それを下回ると相手にされない。何人かの女性と「お見合い」をした男性がいうには、彼女たちにとっては見た目や性格はもちろん、愛情もどうでもよくて、「働かずにそこそこの暮らしができる」ことがすべてなのだ。

 高齢者の婚活市場が残酷なのは、裕福な男性に対して女性の数が圧倒的に多いことだ。当然、ほとんどの女性は満足なパートナーを見つけられないまま老いていく。そうなると、乏しい年金以外に資産も仕事もなく、生活の糧をもたない彼女たちは生活保護で生きていくほかなくなる。こうして日本社会の底辺に吹きだまっていく姿を目の当たりにして、その男性は「難民」と評したのだ。

●たちばな・あきら/1959年生まれ。2002年国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。『言ってはいけない』(新潮新書)、『朝日ぎらい』(朝日新書)、『80’s エイティーズ』(太田出版)など著書多数。

※SAPIO2018年11・12月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

「全国障害者スポーツ大会」を観戦された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月26日、撮影/JMPA)
《注文が殺到》佳子さま、賛否を呼んだ“クッキリドレス”に合わせたイヤリングに…鮮やかな5万5000円ワンピで魅せたスタイリッシュなコーデ
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
遠藤
人気力士・遠藤の引退で「北陣」を襲名していた元・天鎧鵬が退職 認められないはずの年寄名跡“借株”が残存し、大物引退のたびに玉突きで名跡がコロコロ変わる珍現象が多発
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
相撲協会と白鵬氏の緊張関係は新たなステージに突入
「伝統を前面に打ち出す相撲協会」と「ガチンコ競技化の白鵬」大相撲ロンドン公演で浮き彫りになった両者の隔たり “格闘技”なのか“儀式”なのか…問われる相撲のあり方
週刊ポスト
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
注目される次のキャリア(写真/共同通信社)
田久保真紀・伊東市長、次なるキャリアはまさかの「国政進出」か…メガソーラー反対の“広告塔”になる可能性
週刊ポスト
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン