ビジネス

日産の「ゴーンショック」 その余波はどこまで広がるのか

カリスマの「賞味期限」はとっくに過ぎていた?

 カリスマ経営者から一転、「容疑者」に堕ちた日産自動車のカルロス・ゴーン会長──。“コストカッター”の異名をとり、瀕死の状態だった日産を見事V字回復させた剛腕ぶりは企業再建の手本とまで称賛されたが、その輝かしい功績も台無しにしてしまった。

「一人に権力が集中し、長年実力者として君臨してきた弊害は大きい」
「残念という言葉を超えて、強い憤りと落胆を覚えている」

 ゴーン容疑者逮捕の報を受け、11月19日の深夜に記者会見した西川広人社長は、こう淡々と話した。

 長らくゴーン氏の腹心として日産の経営改革を支え、社長の後継指名を受けた西川氏だけに、ゴーン氏の逮捕容疑となっている報酬額の過少申告(有価証券報告書の虚偽記載による金融商品取引法違反)ほか、噂されている子会社を通じた高級住宅の購入や、その他、経費の私的流用といった「複数の重大な不正行為」も知り得る立場にあったはず。

 記者からは西川氏の経営責任を問う声も出たが、「猛省すべきところもあるが、事態を安定化させることが私の責任」と語るにとどめた。

 ジャーナリストの福田俊之氏は、今回のゴーン追放劇の内幕をこう見る。

「もちろん、西川氏もゴーン氏のワンマン経営や公私混同ぶりを黙認してきた一人だと思いますが、社員では到底手に負えないから、司法取引などをしながら東京地検特捜部に任せてつまみ出してもらったということでしょう。このまま不正を見過ごしたままゴーン氏が自ら退任したら、退職金だって何百億円だったでしょうからね。

 確かにリーマン・ショック前のゴーン流改革は持て囃されましたが、2005年以降は経営計画のコミットメント(公約)は未達続き。とっくにカリスマ経営者の“賞味期限”は切れていたのに、社内では誰も抗うことができず、トップに君臨し続けていたのです。

 そこで、ゴーン氏のことを一番よく知っている西川氏が、最後に社員・株主・取引先のため、ひと肌脱いだというシナリオです」

 だが、いくら“裸の王様”を追い出すことに成功しても、世界第2位の販売台数を誇るルノー・日産・三菱自動車連合という巨大グローバル企業のトップが逮捕されるという異常事態のインパクト、そして今後の影響は計り知れない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン