ビジネス

東急電鉄の司令長は大の鉄道好き、撮影した写真が切手にも

東急電鉄で司令長を務める小川昌幸さん

 好きなものや好きなことを仕事にできている人は、ほとんどいないと言われる。だが、東急電鉄に勤める小川昌幸さん(53)は、そんな夢を叶えた人物だ。子供の頃から鉄道に親しみ、今では撮影、模型、乗り鉄、グッズ収集など、ジャンルを問わず鉄道を愛する小川さん。五反田駅の駅員、東横線の車掌や運転士、蒲田駅や中目黒駅の駅長などを経て、現在は運輸司令所の司令長という要職にある。

「鉄道好きで、運転士と駅長と司令長を経験したら、これ以上ないほど幸せな仕事人生ですよね」と笑う小川さんが、鉄道に夢中になったきっかけは何だったのか?

「祖父が旅行好きで、しょっちゅう色々な場所に連れて行かれたのがきっかけです。よく覚えているのは、常磐線の柏駅でのこと。当時まだ貨物で蒸気機関車が走っていて、『デゴイチ』(=D51型蒸気機関車)を見たのです。祖父に抱えられて跨線橋からデゴイチを眺めていると、私の真下に来た瞬間に機関車が汽笛を鳴らしたんです。その音と匂いは忘れられませんし、着ていた白い服も真っ黒になりました」(小川さん・以下同)

 気がつけば鉄道好きになり、中学生になると、父のカメラを借りて鉄道写真を撮るようになった。そして、東京・池袋にある昭和鉄道高校に進学。当然、鉄道会社への就職を希望した。東急を選んだのは、ちょっとした偶然だったそうだ。

「私が高校を卒業した昭和58年は、国鉄が採用を中止した年なんです。同級生たちも、鉄道高校に入るぐらいですから、みな鉄道好き。国鉄のブルートレインや特急に憧れる人が多かったんです。私もブルートレインの車掌の白い制服に憧れていたのは事実ですが、ちょうどその頃、東急は街づくりの上手さが注目されていて、とても勢いがありました。趣味的には、いま渋谷駅のハチ公前広場に飾られている緑色の車両がまだ現役で、特徴的な車両があったので、それも面白いなと。

 一番大きな理由は、近所に東急・世田谷線の運転士の方が住んでいて、その方に鉄道系の学校に通っていることを言ったら『それならぜひ東急にしなさい、いい会社だよ』と言われたことです。その方とは将来、同じ職場で働くという偶然もありました」

 東横線、田園都市線、目黒線、大井町線、池上線、多摩川線、世田谷線を擁する東急だが、営業路線の距離で言えば100キロほどに過ぎない。そんな中でも東京メトロや東武鉄道、西武鉄道など直通運転を行う各社の車両が乗り入れ、常に進化していて面白いと語る。

 就職後も模型や撮影を続けてきた小川さんの趣味は、仕事でもしっかり活かされているそうだ。

「2012年、私が蒲田駅長だったときに池上線(蒲田~池上間)が開業90周年を迎えたので、イベントをやることになったんです。そこでイベントを盛り上げるために何かできないかと考えたところ、ちょうど東急の車両の特徴でもあるオールステンレスの7700系のベースになった7000系車両の『誕生50周年』でもありました。

 そこで私を含めちょっと“鉄分”のある乗務区、検車区の区長と一緒に、当時走っていた車両に貼られていた赤い帯の部分を剥がして、昔の姿にした7700系の車両を走らせたいという企画書を会社に出したらいい反応があり、実現することになりました。イベントの前には鉄道好きの社員有志が集まって車両の磨きだしを手弁当で行いました。とても盛り上がって、地域の方にも喜んでいただけたので嬉しかったですね。社員のモチベーションアップにも繋がりますし、こういった企画は今後もどんどんやっていきたいです」

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト