だが、日本政府はながらく労働移民の受け入れに消極的だった。就労を望む外国人の多くは、形式の上では留学生となったり、搾取構造が深刻な外国人技能実習生として来日せざるを得なかった。
黒工と彼らを取り巻くダーティーな在日中国人コミュニティが生まれた背景には、こうした日本の労働政策のエラーも関係している。
本来、建前としては「労働者」ではないはずの留学生や技能実習生にしか単純労働の門戸を開いてこなかったことで、その環境に不満を持つ層が不法就労に走ってきたという側面も存在するのだ。
今年6月に発表された骨太の方針のなかで、日本政府はようやく重い腰を上げ、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた法改正の動きを示した。
不法滞在や偽造身分証の売買のような違法行為に歯止めをかけつつ、日本社会を覆う人手不足の問題をどう解決に導くのか。政府の力量が試されている。
【PROFILE】安田峰俊●1982年滋賀県生まれ。ルポライター。立命館大学文学部卒業後、広島大学大学院文学研究科修了。最新刊に『さいはての中国』(小学館新書)がある。
※SAPIO2018年11・12月号