「ナベさんは首相の靖国参拝に反対の立場。小泉(純一郎)元首相は忠告を聞き入れなかったが、安倍さんはナベさんに気を使って靖国参拝を控えているんだと思う。安倍さんにはやり遂げたい政策が多いから、逆らうと別のところで横やりを入れられかねない。ナベさんは読売新聞という武器を持っているから、怒らせると『内閣を潰す』と倒閣キャンペーンを張る。そういう怖さを兼ね備えているところが強みでもあった」(屋山氏)
安倍首相がいかに渡辺氏の力を頼っているかは、悲願である憲法改正について昨年5月、「20年施行を目指す」と読売新聞の単独インタビューで述べ、「自民党総裁としての考え方は相当詳しく読売新聞に書いてある。ぜひそれを熟読していただきたい」と国会で言い切ったことからも窺える。
渡辺氏は一新聞記者からいかにして「総理をも怖れさせる力」を身につけたのか。
◆権力ゲームでの“異能”
渡辺氏は東大の学生時代、マルクス主義に傾倒して共産党に入党していた時期がある。『渡邉恒雄 メディアと権力』の著者でジャーナリスト・魚住昭氏の指摘だ。
「渡辺氏は東大時代に共産党員として学生運動を指導した経験から『本当に1人で学生100人を動かせるとわかった。100人で1万人、200人いれば東大生2万人を好きなように動かせる』と語っていた。学生時代の経験から、人を操る一種の権力ゲームに取り憑かれたのでしょう」