まず、最寄りとなる地下鉄大江戸線の「勝どき」駅までは徒歩17分から22分。この距離を毎日歩くのは現実的ではない。
BRTと呼ばれる新交通が整備される予定だが輸送力が脆弱。街区内に停留所が設置されるが、そこを利用する便の1時間当たりの輸送力は地下鉄の1割以下と見込まれる。とてもではないが、通勤や通学で都心方面に向かう全員を運べないはずだ。きっと東京駅方面へ向かう何台ものシャトルバスを走らせることになるのではないだろうか。
こういう利便性に難のあるマンションは値上がりしにくい。また、賃貸としても借り手を見つけにくい。だから、金融商品としての魅力は薄い。
ということは4145戸のほとんどは実需での購入を想定するしかない。つまり、4145世帯が実際に住むためにHARUMI FLAGを買わなければ完売しないということになる。
肝心の販売価格は正式に発表されていないが、一部報道によると坪単価270万円から280万円だそうだ。86平方メートルの住戸なら7200万円ということになる。パワーカップルと呼ばれる共働き世帯の収入は1400万円以上。新築マンションの購入目安は年収の5倍ちょっとだから、今の金利水準だと十分に手が届く範囲内だ。
2019年の5月から販売が始まるとして、入居までは46か月。それまでにめでたく完売させるには1か月に90戸ペースで成約していかなければならない。1年で1080戸。かなりのハイペースだが、その間には五輪が開催される。そこでは販売がかなり盛り上がるはずだ。
また、仮に今の新築マンション市場で坪単価270万円から280万円という価格帯で売り出されたとすると、少なくとも中央区の中では最安水準。城南でも大田区の住宅地エリアの価格水準である。坪300万円以上が当たり前になった世田谷区内なら見つけにくい価格帯だ。したがって、販売当初はそれなりの勢いで売れていくとは考えられる。
ただし、こういうマンションの購入を検討する場合、華やかな広告に惑わされるべきではない。仮に、入居してから10年後に売却するときには、すでに新築時のイメージは消えている。そのマンションのスペックだけが頼りだ。