「ところが、1990年代以降は、愛人が登場し、時代を代表するような作品がほとんどありません」(前出・秋本氏)
理由として考えられるのは現実の世界の変化で、バブル崩壊、リーマン・ショックにより、一般の男性に愛人を持つ経済力がなくなったことが挙げられる。また1986年施行の男女雇用機会均等法により、女性の社会進出、自立が進んだことも大きい。
男女が対等の立場に変わるにつれ、婚姻関係にない男女の関係が愛人から不倫へと変わったのだ。さらに前出・亀和田氏は、「ウェットでヘビーな人間関係が疎まれ、ライトでドライな人間関係が好まれるようになったことも影響している」と分析する。
だが、愛人を持つことへの男の憧れ、願望が消滅したわけではない。壇蜜や橋本マナミらが「愛人の象徴」として人気があるのは、そうした思いの投影ではないだろうか。
取材・文■鈴木洋史
※週刊ポスト2018年12月7日号